ウンシュウミカンには発現特性の異なる3種のGA2酸化酵素遺伝子が存在する

要約

活性型ジベレリンの分解に関わるGA2酸化酵素遺伝子はウンシュウミカンでは少なくとも3種類存在し、異なる発現特性を示す。それらをシロイヌナズナに導入すると茎頂伸長抑制や花成形成が遅延し、生体内ジベレリン含量の制御に関わることが示唆される。

  • キーワード:ウンシュウミカン、結実性、ジベレリン、GA2酸化酵素、遺伝子発現特性
  • 担当:果樹茶業研究部門・カンキツ研究領域・カンキツゲノムユニット
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ウンシュウミカンは高い単為結果性を有し、開花期の花芽において植物ホルモンの一種であるジベレリン含量の一過的な上昇がその主な要因であると考えられている。ジベレリンのうち、活性型ジベレリンGA1やGA4は前駆体ent-カウレンから早期13位水酸化経路または早期非水酸化経路を経てGA20酸化酵素とGA3酸化酵素により合成され、GA2酸化酵素により不活性化されることで生体内含有量が制御されると考えられ、これまでの解析から、生体内の活性型ジベレリン含量の制御には分解に関わるGA2酸化酵素が重要であることが示唆されている。そこで本研究ではウンシュウミカンのGA2酸化酵素遺伝子を単離してその特性と機能を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 活性型ジベレリンの分解に関わるGA2酸化酵素遺伝子はウンシュウミカンでは3種(CuGA2ox4CuGA2ox2/3CuGA2ox8)存在する。これらは3または4つのエクソンと2または3つのイントロンからなり、対応するcDNA配列から推定されたCuGA2ox4CuGA2ox2/3CuGA2ox8の全配列長はそれぞれ1,005、1,038、1,089bp(334、345、362アミノ酸残基)である(図1)。
  • ゲノム解析の結果から、CuGA2ox4CuGA2ox2/3CuGA2ox8はいずれもウンシュウミカンやブンタン、カラタチなど11種のゲノム中にそれぞれ1から数コピー存在すると推定される(図省略)。
  • 単離された3種類のGA2酸化酵素遺伝子を導入して発現させたシロイヌナズナでは茎頂の伸長抑制や花成形成の遅延が観察され(図2)、単離された遺伝子は生理的な機能を有しており、遺伝子導入個体では内生ジベレリンの分解を促進することにより茎頂伸長抑制などの変化を生じたと推定される(図3)。
  • 3種類のGA2酸化酵素遺伝子の発現特性はいずれも大きく異なり、各種器官、時期における遺伝子発現量の制御を介して器官・時期特異的な内生ジベレリン量を制御している可能性が示唆される(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本遺伝子ならびにすでに単離されているGA20酸化酵素遺伝子の発現と、花芽や幼果における内生ジベレリン量の変動と制御を遺伝子レベルで解析することにより、単為結果性や着果安定性、隔年結果性の制御に関する知見が得られると期待される。
  • 単離された3種のゲノム遺伝子およびcDNA配列は公的DNAデータベースに登録済みである(ゲノムアクセッション番号LC149862、LC149863、LC149864およびcDNA LC149859、LC149860、LC149861)。

具体的データ

図1 単離した3種のGA2酸化酵素遺伝子(CuGA2ox4、CuGA2ox2/3、CuGA2ox8)の構造?図2 3種のGA2酸化酵素遺伝子を導入したシロイヌナズナ組換え体で観察される茎頂の伸長抑制?図3 導入したGA2酸化酵素遺伝子の発現増大による活性型ジベレリン(GA)量低下を介した茎頂伸長抑制の想定される分子機構?図4 3種のGA2酸化酵素遺伝子の各器官、時期別の相対発現量

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008~2016年度
  • 研究担当者:古藤田信博、松尾哲、本多一郎、清水徳朗
  • 発表論文等:Kotoda N. et al.(2016)Hort. J. doi:10.2503/hortj.OKD-016