果実保護ネットによる短梢せん定ブドウの鳥獣害対策の省力化
要約
主に短梢せん定ブドウを対象とした果実保護ネットは、棚下で簡易に設置できるため、脚立や踏み台などが不要な果実の防鳥獣資材である。本資材により、鳥獣害対策にかかる作業の省力・安全化ならびに高い防鳥獣効果が得られる。
- キーワード:安全性、軽労化、鳥獣害、物理的防除、ブドウ
- 担当:果樹茶業研究部門・ブドウ・カキ研究領域・ブドウ・カキ育種ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-6453
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
ブドウ露地栽培における鳥獣害対策は、ブドウ棚上および圃場周囲へのネットの設置や電気柵とネットの併用が一般的であるため、設置作業や維持管理に多大な労力を要している。また、ブドウの長梢せん定栽培は整枝・せん定など煩雑な作業が多いため、近年は果房が直線状に配置されて栽培管理が簡便な短梢せん定栽培の普及が進んでいる。そこで、主に短梢せん定ブドウを対象とした、着脱が容易で鳥獣害を効果的に防ぐ果実保護ネットを開発する。
成果の内容・特徴
- 耐久性のあるポリエチレン製のネットを用いて、短梢せん定栽培により直線状に配列された果房のみを被覆することで、多数の果房が一度に保護できる(図1A~C)。
- ネットの設置は棚下で実施できるため、脚立や踏み台などを使う必要がなく、傾斜地や狭い圃場でも安全に作業できる(図1C)。
- ネットに装着された固定用治具を棚線に設置した後、ネットの下方を持ち上げ果房を被覆する。次に、ネット外周を面ファスナーで接合することで果房がネットに内包される(図1B、C)。
- 慣行の防鳥ネットの設置には一樹当たり約16分を要するのに対し、果実保護ネットでは約5分であり、設置時間を大幅に短縮できる(図2)。
- 防鳥獣対策を施さない無被覆区では、収穫日までに約50%の果房が鳥類ならびにアナグマ、テンなどの小動物により中~大の被害を受けるのに対して、果実保護ネット区では被害を約6%に抑えることができる(図3)。果実保護ネット区の被害は、被覆後にネットと果房が密着しやすいネット両端で主に見られる。
普及のための参考情報
- 普及対象:ブドウ生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:ブドウの短梢せん定栽培地域、特に鳥害ならびにアナグマ、テン、ハクビシンなどの小動物による獣害が頻発する中山間地での普及が見込まれる。クマなどの大型動物に対する保護効果は期待できない。
- その他:2016年度から実施許諾先が公立試験研究機関、JA、生産者を対象としたプロ仕様品の受注生産を開始し、これまでに100枚以上の販売実績がある。ホームセンター等での一般向け廉価品の販売に向けた検討も進めている。
具体的データ
その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2008~2018年度
- 研究担当者:東暁史、薬師寺博、児下佳子
- 発表論文等:
- 東ら(2011)園芸学研究、10(1):55-60
- 東ら「果房や果実の保護方法、果房や果実の保護ネット」特許第5388064号(2013年10月18日)