着脱容易で耐久性のある果実被覆資材によるリンゴ日焼け軽減技術

要約

果実への着脱が容易で繰り返し使用可能な果実被覆資材を、強い直射日光にさらされる部位に着果している日焼け発生リスクの高い果実に被覆することで、簡便に日焼けの発生を軽減させることができる。

  • キーワード:温暖化、遮光資材、散光性、化繊布、果面温度
  • 担当:果樹茶業研究部門・リンゴ研究領域・リンゴ栽培生理ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6453
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年、温暖化の影響による猛暑や残暑の厳しい年が増え、リンゴにおける日焼け果(図1)の発生が問題となっている。日焼け果の発生は、強い直射日光が果実に当たり果実表面温度が極端に高くなることが原因と考えられている。
果実の日焼け対策としては、これまで樹全体を寒冷紗で覆う方法が一般的に用いられてきた。しかし、日焼けは、全ての果実に発生するわけではなく、樹の外縁部の強い直射日光にさらされる部位に着果した果実で多く発生することが知られている。これら一部の果実の日焼けを防ぐために樹全体を寒冷紗で覆うことは、多大な労力と経費がかかり、効率が悪い。そこで、着脱が容易で繰り返し使用可能な果実被覆資材を用いて、日焼けしそうな果実だけを選択的に遮光して日焼けを軽減する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • カサ状散光性資材(図2上)は、資材の切れ目に果軸を通して両端を重ね、ホッチキスで1カ所留めるだけで容易に果実上部に固定でき、直射日光を遮ることができる。ホッチキスの針を丁寧に外すことで、3年以上の繰り返し使用が可能である。
  • 白色化繊布(図2下)は伸縮性のある筒状の形態であるため、資材を広げて果実にかぶせるだけで果実全体を容易に覆うことができ、直射日光を遮ることができる。資材の裾を引っ張るだけで容易に外すことができ、3年以上の繰り返し使用が可能である。
  • いずれの資材も果実の表面温度の上昇を防ぐ効果がある(図3)。生食用として出荷できない「中度」以上の日焼け果の発生を1割以下に抑えることができる(図4)。
  • いずれの資材も、仕上げ摘果の終了した7月上旬に取り付けるのがよい。白色化繊布は、取り外し時期が遅いと果実の色づきが悪くなるとともに、病害虫やサビの発生するリスクが高まるため、8月下旬には取り外す。カサ状散光性資材も、取り外し時期が遅いとサビが増加する危険があるため、日焼けの起こらない時期になったら速やかに外すことが望ましい。

普及のための参考情報

  • 普及対象:リンゴ生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:石川県では農林水産研究成果集報でカサ状散光性資材及び白色化繊布の効果を公表(H30.3発行)するとともに、県リンゴ部会講習会で本成果を紹介。石川県内でカサ状散光性資材3,000枚使用(2018年実績)。長野県では果樹協会を通じて2019年より白色化繊布の斡旋販売開始。
  • その他:
    • カサ状散光性資材は「サンチル」として(株)能任七で製造・販売。白色化繊布は「サンテ」として販売(製造販売元:東洋殖産(株)、販売代理店:三島殖産(株)、石川殖産(株)、岡崎殖産(株)、千葉殖産(株)、東洋サービス(株)、全国のJA・一部の全農本部)。
    • 日焼け果の発生の軽減が確認されている品種には、「秋星」(石川県金沢市)、「ふじ」(富山県魚津市)、「つがる」(岩手県盛岡市)がある。

具体的データ

図1 日焼けしたリンゴ果実,図2 果実被覆資材と被覆した状態,図3 果実表面温度に及ぼす被覆資材の効果,図4 日焼け果発生率に及ぼす被覆資材の効果

その他

  • 予算区分:委託プロ(温暖化適応・異常気象対応)
  • 研究期間:2015~2017年度
  • 研究担当者:本多親子、岩波宏、松田賢一(石川県農総研セ)、大城克明(富山県農総技セ)
  • 発表論文等:農研機構(2018)「リンゴ果実への被覆資材による日焼け軽減対策技術マニュアル」http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/080314.html(2018年3月1日)