カラムナータイプのリンゴでは根特異的ジオキシゲナーゼ遺伝子が地上部でも発現している

要約

普通樹形のリンゴでは主に根で発現しているジオキシゲナーゼ遺伝子が、カラムナータイプのリンゴでは根に加え、茎頂や葉などの地上部でも発現している。

  • キーワード:リンゴ、樹形、カラムナー、根、突然変異
  • 担当:果樹茶業研究部門・リンゴ研究領域・リンゴ育種ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6453
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

普通樹形のリンゴ品種「McIntosh」の突然変異体として発見された「Wijcik」は、節間が短く、側枝の発生が少ないという特徴を持ち、円柱状の樹形に生長する。これらの性質はカラムナー性と呼ばれ、樹形が単純でコンパクトになるため、せん定や収穫などの作業を省力化できると期待されている。これまでに「Wijcik」の突然変異の原因として、第10染色体に約8.2kbのレトロポゾンの挿入変異を同定している。さらに、カラムナー性の原因遺伝子候補として、この挿入変異の下流にあるジオキシゲナーゼ類似タンパクをコードする91071遺伝子を見出している。本研究では、接ぎ木実験と91071遺伝子の発現解析を行うことにより、カラムナー性の発現機構を解明する。

成果の内容・特徴

  • 普通樹形の台木にカラムナータイプの穂木を接ぎ木した場合、穂木はカラムナー性を示す。また、カラムナータイプの台木に普通樹形の穂木を接ぎ木した場合、穂木は普通樹形を示す。
  • RT-PCRによる発現解析の結果、91071遺伝子は普通樹形のリンゴでは主に根で強く発現している(表1)。
  • RT-PCRによる発現解析の結果、91071遺伝子はカラムナータイプのリンゴでは根に加え、茎頂や葉でも発現している(表1)。
  • 組織標本における顕微鏡下で観察した結果、91071遺伝子は根の先端や側根原基といった分裂が盛んな組織で発現しており(図1A、B)、普通樹形とカラムナータイプのリンゴの間で違いは見られない。
  • 組織標本における顕微鏡下で観察した結果、91071遺伝子はカラムナータイプのリンゴの茎頂表層細胞と葉原基でも発現している(図1C)。
  • 以上のように、根における91071遺伝子の発現は普通樹形とカラムナータイプのリンゴの間で違いは見られず、台木(根)はカラムナー性に影響を及ぼさない。「Wijcik」では本来根で発現していた91071遺伝子が、突然変異により地上部(茎頂や葉)でも発現するようになった結果、カラムナー性が誘導されたと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 91071遺伝子は、リンゴの形態形成に影響を与える物質の代謝に関与している可能性がある。

具体的データ

表1 RT-PCRによるリンゴの各組織における91071遺伝子の発現解析,図1 in situハイブリダイゼーションによる91071遺伝子の発現組織の解析 (A)普通樹形のリンゴの根の先端、(B)普通樹形のリンゴの側根原基、(C)カラムナータイプのリンゴの茎頂

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(次世代ゲノム)
  • 研究期間:2013~2018年度
  • 研究担当者:和田雅人、岩波宏、森谷茂樹、花田俊男、守谷友紀、本多親子、清水拓、阿部和幸、岡田和馬
  • 発表論文等:Wada M. et al. (2018) Plant Growth Regul. 85:389-398