直がけ被覆栽培をした一番茶新芽の摘芽形質の特徴とその評価法
要約
直がけ被覆栽培の影響が強く表れる一番茶新芽の形質は、葉面積あたりの葉乾物重およびクロロフィルa/b比、エピカテキン、エピガロカテキン、テアニンなどである。また、新葉中のクロロフィル含量を現場で推定する場合、SPAD値を葉厚で割った値を用いることで精度が向上する。
- キーワード:直がけ被覆栽培、葉面積あたりの葉重(LMA)、クロロフィル、テアニン、カテキン
- 担当:果樹茶業研究部門・茶業研究領域・製茶・土壌肥料ユニット
- 代表連絡先:電話0547-45-4101
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
日本国内の茶園において、玉露や碾茶、かぶせ茶などの高品質、高価格な茶を生産するために、茶園を遮光して新芽を育てる被覆栽培が行われている。その中で近年、茶樹の上に化学繊維の被覆資材を直接被せて遮光する直がけ被覆栽培が増加している。しかし、適切な遮光率や被覆期間を設定するために必要な、直がけ被覆後の新芽の生長程度と形態、色、化学成分などの各形質の関係を網羅的に調べた事例は限られている。そこで本研究では、複数段階の遮光率でチャの直がけ被覆栽培を行い、摘芽の形質を経時的に調査することにより、被覆栽培の影響が強く表れる形質を明らかにする。
成果の内容・特徴
- チャの摘芽と新葉の形質を表す33種類の変数を用いた主成分分析の結果、第1主成分は新芽の生長程度、第2主成分は被覆による新芽の形質への影響を表す変数と推察される(図1)。
- 被覆による影響が強く表れる新葉の形態は、葉面積あたりの葉重(LMA)および葉幅/葉長である。同様に、摘芽または新葉の成分については、エピカテキン(EC)およびエピガロカテキン(EGC)、テアニン、クロロフィルa/b比、含水率、クロロフィル、アスパラギン酸である(図1)。
- チャの新葉のクロロフィル含量を、葉緑素計(SPAD502-Plus、コニカミノルタ社製)による測定値(SPAD値)で推定する場合、SPAD値を葉厚で除した値を用いることで推定精度が向上する(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、適切な被覆資材の選定および被覆期間の設定、被覆栽培された原葉にあった製茶方法の開発、茶の標準規格化の際の参考情報として活用できる。
- 処理区の遮光率の表記は被覆資材のメーカー公表値である。
- 本試験の供試品種は「やぶきた」である。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、競争的資金(イノベ創出強化)
- 研究期間:2015~2017年度
- 研究担当者:佐野智人、堀江秀樹、松永明子、廣野祐平
- 発表論文等:
- 松永ら(2016)茶研報、122:1-7
- Sano T. et al.(2018)J. Sci. Food Agric. 98(15):5666-5676