チャノミドリヒメヨコバイに対するチャ遺伝資源の抵抗性要因は師管液摂取の阻害である

要約

チャノミドリヒメヨコバイに抵抗性を持つチャ遺伝資源上では、本種による師管液の摂取時間と回数が著しく減少する。師管液摂取の阻害が本種に対する抵抗性の要因である。

  • キーワード:チャ、チャノミドリヒメヨコバイ、DC EPGシステム、吸汁行動解析、抵抗性メカニズム
  • 担当:果樹茶業研究部門・茶業研究領域・茶病害虫ユニット
  • 代表連絡先:電話0547-45-4101
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

チャの最重要害虫の1種であるチャノミドリヒメヨコバイは、新芽を吸汁加害し、収量と製茶品質に悪影響を及ぼす。年間に6回以上発生する本種は、防除回数も多くなることから抵抗性品種の開発が望まれている。これまで本種の吸汁時に排出される甘露の量が少ない、甘露中のアミノ酸含有量が少ないなどの性質を持つ抵抗性育種素材として枕Cd19と枕Cd289を選定している。そこで本研究では、吸汁行動を直接的に測定できるDC EPGシステムを用いて、両遺伝資源が持つこれらの抵抗性現象を起こす要因を明らかにし、チャが持つ本種に対する抵抗性の信頼性を保証する。

成果の内容・特徴

  • 本種に対する感受性品種である「やぶきた」上では多くの吸汁波形が観測されるのに対して、枕Cd19と枕Cd289上では、観測される吸汁波形数が非常に少ない(図1)。
  • 枕Cd19と枕Cd289上では、師管液の摂取時間が「やぶきた」上と比べて約20分の1に減少する(表1)。摂取の回数も「やぶきた」に比べて約7分の1に減少する(表1)。1回あたりの師管液摂取時間は、枕Cd19と枕Cd289上では、約2分の1から3分の1である(表1)。
  • 吸汁行動の定量的測定から、抵抗性遺伝資源上では師管液摂取の阻害が起きていることがわかる。実際の吸汁量と相関のある甘露排出量の減少や甘露中のアミノ酸含有量の減少などさまざまな抵抗性現象は、この阻害に起因する。

成果の活用面・留意点

  • DC EPGシステム(図2)は、アブラムシ類やヨコバイ類などの吸汁性昆虫の吸汁行動を電気波形として観測する装置である。
  • DC EPGシステムは、口針の挿入、唾液の分泌や師管液摂取など各吸汁行動の回数や持続時間を定量化できる。
  • DC EPGシステムで測定できる師管液摂取の持続時間や回数は、抵抗性育種素材や品種の重要な選抜指標として活用できる。

具体的データ

図1 感受性品種「やぶきた」上で観測した吸汁波形(左)と抵抗性チャ遺伝資源上で
観測した吸汁波形(右)
,表1 5時間の観測あたりの各品種・系統における師管液摂取の平均摂取時間、平均回数と1回あたりの持続時間(反復15),図2  DC EPGシステムの概念図

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「先導プロ」)
  • 研究期間:2014~2017年度
  • 研究担当者:萬屋宏
  • 発表論文等:
    • Yorozuya H. (2016) Entomol. Sci. 19:401-409
    • Yorozuya H. (2017) Entomol. Exp. Appl. 165:62-69