カラムナータイプリンゴを用いた隔年交互結実による加工用リンゴの生産方法

要約

隔年結果性の強いカラムナータイプリンゴを無摘果で管理することで、大量着果と無着果を園地の半分ずつの木で交互に繰り返させることができる。着果管理と着色管理を省くことで、単価の安い加工用リンゴを、生果用と同等の労働生産性で安定生産できる。

  • キーワード:労働生産性、摘果、省力樹形、花芽率
  • 担当:果樹茶業研究部門・リンゴ研究領域・リンゴ栽培生理ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

労働力不足で耕作放棄されたリンゴ園の増加が問題となっている。少ない労力でリンゴ生産を維持するために、自園地の一部を加工専用の園地にすることが検討されている。加工用であれば着色管理を省くことができるが、加工用の果実は単価が安いため、着色管理に要する労力を削減しただけでは通常の生果用生産と同等の収益は得られない。生果用生産と同等の労働生産性を実現するためには、着色管理以外の作業の労力も削減しつつ収量を上げることが必要となる。そこで、本研究では省力樹形であるカラムナータイプリンゴを用い、着果管理および収穫作業時間を削減しつつ、安定して多収となる加工専用のリンゴ生産技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 果汁用リンゴは生果のおよそ1/5の単価で取り引きされている。果汁用リンゴ生産が生果用生産と同等の労働生産性となるためには、労働時間2割削減で反収10t、6割削減では8tが必要となる(図1)。
  • カラムナータイプリンゴは、側枝が横に張り出さないため密植することができる。また、隔年結果性が強いため、過着果させると翌年はまったく花が着かない。無摘果で管理すると、着果年と不着果年を交互に繰り返すようになる(図2)。
  • 着果量が多いと収穫に時間がかかる。密植したカラムナータイプリンゴを斜立させ、落とした果実を回収する装置を使うことで、大量の果実を効率的に収穫することができる(図3)。
  • 樹齢と着果量から翌年の花芽率を推定するモデルがある。そのモデルを用いると、果実成り始めの3年生樹の時に全摘果する列と無摘果の列を交互につくり、翌年以降はすべて無摘果とすると、樹列ごとに交互に着果させることができ、毎年安定した収量が得られると示唆される(図4)。
  • 570本/10aの栽植密度で、半数の樹を着果(285果/樹、150g/果)させるだけで、反収は10tとなる。せん定の容易なカラムナータイプリンゴを無摘果で管理し、着色管理を省き、収穫作業も効率化することで、労働時間は6割削減できる。

成果の活用面・留意点

  • 本試験は、カラムナータイプリンゴ5-12786を、栽植密度570本/10a、斜立仕立てで管理し、樹ごとの着果量、花芽率および頂芽数を定植9年目まで測定して得られた結果である。
  • 本試験の供試系統は、無摘果で管理すると一果そうに3個程度着果する。
  • 現在市販のカラムナータイプリンゴは糖度の低い観賞用のものが多い。供試した5-12786は果実品質の改良を目的とした育成途中の系統で、過着果させた時の平均果実重は150g、糖度は10°Brixである。

具体的データ

図1 生果用リンゴ栽培と同等の労働生産性となるための、加工用リンゴの生果比単価、労働時間、反収との関係,図2 樹列別隔年交互結実させた斜立仕立てカラムナータイプ5-12786,図3 樹冠下に設置した簡易収穫補助ネットと果実回収用リンゴ専用コンテナ,図4 モデルから指定した交互に着果させる摘果方法とその時の花芽率(A)および着果数(B)の推移

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(業務・加工用)
  • 研究期間:2013~2020年度
  • 研究担当者:岩波宏、馬場隆士、守谷友紀、阪本大輔、花田俊男
  • 発表論文等:
    • Iwanami H. et al. (2019) Scientia Horticulturae 256:108529
    • 岩波ら(2021)農研機構研究報告 7:63-72