リンゴのカラムナー性は、活性型ジベレリンの欠乏により生じる
要約
カラムナータイプのリンゴでは、地上部で異所的に発現した新規ジオキシゲナーゼが活性型ジベレリンを減少させることにより、節間が短く、側枝の発生が少なくなり、円柱状の樹形を示すようになると考えられる。
- キーワード:リンゴ、樹形、カラムナー性、ジベレリン、ジオキシゲナーゼ
- 担当:果樹茶業研究部門・リンゴ研究領域・リンゴ育種ユニット
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
リンゴ品種「McIntosh」の突然変異体として発見された「McIntosh Wijcik」は、節間が短く、側枝の発生が少ないという特徴を持ち、円柱状の樹形に生長する。これらの性質はカラムナー性と呼ばれ、樹形が単純でコンパクトになるため、せん定や収穫などの作業を省力化できると期待されている。果樹茶業研究部門では、カラムナー性の原因遺伝子として、「McIntosh Wijcik」の地上部で異所的に発現する新規ジオキシゲナーゼ遺伝子(MdDOX-Co)を発見している。本研究では、MdDOX-Coの機能解析を行うことにより、カラムナー性の発現機構を解明する。
成果の内容・特徴
- MdDOX-Coを過剰発現させた形質転換タバコは、草丈と節間が短くなり、わい化する(図1)。
- わい化したMdDOX-Co過剰発現タバコに、園芸作物等の植物成長調整剤として利用されている活性型ジベレリン(GA3)を処理すると、草丈と節間が長くなり表現型が回復する(図2)。
- わい化したMdDOX-Co過剰発現タバコでは、活性型ジベレリン(GA1とGA4)が減少している(データ省略)。
- 「McIntosh Wijcik」に活性型ジベレリン(1mM GA3)を処理すると、主幹延長枝と節間が長くなり、側枝(副梢)数が増加する(表1)。
- MdDOX-Co酵素はジベレリンの前駆体GA12を水酸化してGA111に代謝する機能を持つため、活性型ジベレリンであるGA4の生合成が妨げられる(図3)。
- 以上の結果から、「McIntosh Wijcik」の地上部で異所的に発現したMdDOX-Coが活性型ジベレリンを減少させることにより、主幹延長枝と節間が短くなるだけでなく、側枝数が減少し、円柱状の樹形になると考えられた。
成果の活用面・留意点
- カラムナータイプのリンゴの苗木において主幹延長枝の伸長が劣る場合、活性型ジベレリン(GA3)を処理することにより伸長を促進できる。
- 活性型ジベレリン(GA3)は、リンゴにおいて植物成長調整剤として登録されていない。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(園芸遺伝子)
- 研究期間:2013~2020年度
- 研究担当者:
岡田和馬、和田雅人、竹林裕美子(理化学研究所)、小嶋美紀子(理化学研究所)、榊原均(名古屋大学)、中安大(神戸大学)、水谷正治(神戸大学)、中嶋正敏(東京大学)、森谷茂樹、清水拓、阿部和幸、渡辺大智(東京大学)、高橋郁夫(東京大学)、Jaroensanti-Takana Naiyanate(東京大学)、宮崎翔(東京大学)、姜凱(東京大学)、浅見忠男(東京大学)
- 発表論文等:
- Okada K. et al. (2020) Tree Physiology 40:1205-1216
- Watanabe D. et al. (2021) The Plant Journal 105:1026-1034
- 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部 研究成果「円柱状のリンゴ樹形はジベレリンの枯渇が原因だった」 (2020年11月20日公開)