耐寒性が強くクワシロカイガラムシ抵抗性のある中生緑茶用品種「かなえまる」
要約
「かなえまる」はクワシロカイガラムシ、輪斑病の防除の必要性はほとんどなく、通常の気象条件であれば炭疽病ともち病の防除の必要性もない。また、耐寒性が強く中山間地を含む主要な茶産地で広く栽培が可能で、被覆栽培にも適した中生緑茶用新品種である。
- キーワード:中生緑茶用品種、クワシロカイガラムシ抵抗性、複合病害抵抗性、耐寒性、被覆栽培
- 担当:果樹茶業研究部門・茶業研究領域・茶栽培ユニット
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
広く普及している中生の茶品種の「やぶきた」は炭疽病、輪斑病やクワシロカイガラムシのような病虫害の発生は多い。農薬散布量削減の流れの中、低農薬でも高品質な茶が安定して生産できる中生の病虫害抵抗性品種の育成が求められている。
成果の内容・特徴
- 病害抵抗性の「ゆたかみどり」と耐寒性の「さやまかおり」の交配から得られた金F183を種子親に、クワシロカイガラムシの寄生が極めて少ない金谷13号を花粉親として、1994年に交配した実生群から選抜された品種である(図1)。
- 耐寒性の指標である赤枯れ、青枯れ抵抗性は"強"で、裂傷型凍害抵抗性は"やや強"で、「やぶきた」より強い。また、定植2年目以降の生育は良好である(表1)。
- 輪斑病抵抗性は"強"で、炭疽病ともち病抵抗性は"やや強"ある。また、クワシロカイガラムシ抵抗性も"強"である(表1)。
- 萌芽期はどの地域でも「やぶきた」よりやや遅いが、摘採適期はほぼ同じかやや早い(データ省略)。
- 一番茶、二番茶収量は「やぶきた」より多く、多収性を示す。一番茶品質は「やぶきた」より良く「さえみどり」とほぼ同じである。二番茶の品質は他の品種より良好である。(表2)。
- 新芽が小さいのでてん茶栽培には適さないが(データ省略)、かぶせ茶や玉露栽培では他の品種より収量や品質に優れる(表3)。
成果の活用面・留意点
- 赤焼病抵抗性は"弱"のため、防除が必要である。
- 挿し木苗の生育がやや劣るため(データ省略)、定植時には丁寧に取り扱う。
- 萌芽からの経過日数を「やぶきた」と同様にすると、摘み遅れる可能性があるので、摘採時期の把握には注意する必要がる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(実需者茶品種、茶低温保管)
- 研究期間:1994~2019年度
- 研究担当者:佐波哲次、根角厚司、吉田克志、荻野暁子、松永明子
- 発表論文等:佐波ら「かなえまる」品種登録出願公表第34332号(2020年2月13日)