玉露のヘッドスペースに含まれる香気寄与成分

要約

高級茶である玉露のヘッドスペースに含まれる主要な香気寄与成分は (Z)-1,5-octadien-3-one、dimethyl sulfide、3-methylnonane-2,4-dione、4-mercapto-4-methyl-2-pentanone、furaneol、2-acetyl-1-pyrrolineの6成分である。

  • キーワード:玉露、香気寄与成分、ヘッドスペース、香気エキス希釈分析、GC-O
  • 担当:果樹茶業研究部門・茶業研究領域・茶品質機能性ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

玉露は覆い下茶園の新芽で製造された高級茶である。玉露は煎茶にはない青海苔様の香りや新鮮な干し草様の香り、そして甘い香りがある。湯を注いだ時にたちこめる玉露のヘッドスペースの香りは、その特有の香りが強く感じられる。
そこで、特徴的な玉露のヘッドスペースの香りを明らかにするため、SPMEファイバーで香りを抽出し、におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(GC-O)とGC-MSを用いて香気寄与成分を特定する。さらに、香気エキス希釈分析により玉露の香りに強く影響する主要な香気寄与成分を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 玉露のヘッドスペースからSPMEファイバーで香りを抽出し、GC-O分析すると、計32成分が検出される(表1)。別途、玉露2 kgから香気エキスを得て、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分画し、各画分をGC-OとGC-MS分析することにより28成分が特定される(表1)。
  • 香気エキス希釈分析によると、dimethyl sulfide(青海苔様)、1-octen-3-one(グリーン、マッシュルーム様)、2-acetyl-1-pyrroline(香ばしい)、(Z)-1,5-octadien-3-one(金属様)、4-mercapto-4-methyl-2-pentanone(肉様)、(E,E)-2,4-heptadienal(脂肪臭)、(E,Z)-2,6-nonadienal(グリーン、キュウリ様)、3-methylnonane-2,4-dione(グリーン、畳様)、trans-4,5-epoxy-(E)-2-decenal(果実様)、furaneol(甘い)の10成分が最も高いFDファクターで検出され、玉露のヘッドスペースの香りに強く影響する(表1 塗りつぶした成分)。
  • 主成分スコアの散布図(図1(a))および因子負荷量の散布図(図1(b))から玉露のヘッドスペースの香りに影響する主要な香気寄与成分は No.10 (Z)-1,5-octadien-3-one、No.1 dimethyl sulfide、No.24 3-methylnonane-2,4-dione、No.11 4-mercapto-4-methyl-2-pentanone、No.29 furaneol、No.9 2-acetyl-1-pyrrolineの6成分である(表1 太字で示した成分、図2)。
  • (Z)-1,5-octadien-3-oneと3-methylnonane-2,4-dioneは玉露の干し草様の香り、dimethyl sulfideは青海苔様の香り、4-mercapto-4-methyl-2-pentanoneはふくよかな香り、2-acetyl-1-pyrrolineとfuraneolは甘い香りを増強する。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、玉露の主産地である福岡県八女市産5点、京都府宇治市産5点、静岡県藤枝市産5点、100gあたり1875円から60000円の玉露を分析して得られた結果である。
  • 茶葉を凍結粉砕し、飽和塩化ナトリウム溶液20 mLとともに容量40 mLのバイアル瓶に入れ、温度40°Cで玉露のヘッドスペースを5分平準化させる。そのヘッドスペースにSPMEファイバーを差し込み、30分間吸着部を露出して成分を吸着させ、GC-OおよびGC-MS分析する。
  • 分析に用いたSPMEファイバーはCarboxen/PDMS、PDMS/DVB、Polyacrylateの3種類である。香気エキス希釈分析では、それぞれのファイバーを用いて玉露2.5 g、0.25 g、0.025g(FDファクター1、10、100)の3段階としてヘッドスペースの香りを抽出し、GC-O分析する。

具体的データ

表1 玉露のヘッドスペースに含まれる香気寄与成分の特定,図1 玉露のヘッドスペースに含まれる香気寄与成分のFDファクターの指数を変量とした主成分スコア(a)と因子負荷量(b)の散布図,図2 玉露のヘッドスペースに含まれる主要な香気寄与成分

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2015~2020年度
  • 研究担当者:水上裕造
  • 発表論文等:水上裕造(2020)茶研報、130:39-46