エリアンサス品種「JES1」から製造した草本系バイオマス燃料利用
要約
エリアンサス品種「JES1」を利用して高品質の草本系バイオマスペレット燃料を作成できる。耕作放棄地で栽培した「JES1」からバイオマス燃料を加工し、温泉給湯などのバイオマス燃料給湯ボイラーに利用することにより、バイオマス燃料の地産地消やCO2の排出削減に貢献できる。
- キーワード: 資源作物、エリアンサス、バイオマス燃料、CO2排出削減、耕作放棄地
- 担当:畜産研究部門・飼料作物研究領域・飼料作物ゲノムユニット
- 代表連絡先:
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
温室効果ガス排出削減のため、再生可能エネルギーの一つとして、資源作物から作られるバイオマス燃料が注目されている。そこで、耕作放棄地を利用した永年栽培が可能で、収量が高く低コストで栽培可能なエリアンサス品種「JES1」を利用したバイオマスペレット燃料の作成および、その燃焼特性を確認し、バイオマス給湯ボイラーの燃料として安定供給・利用が可能であることを明らかとする。
成果の内容・特徴
- 多年生イネ科資源作物エリアンサス「JES1」(図1、左)を用いて、栃木県さくら市内の(株)タカノおよびさくら市が、市内耕作放棄地を利用した原料生産、バイオマスペレット燃料(図1、右)への加工、利用を一貫して行う仕組みを実現し事業化している(図2)。
- 乾物収量20t/ha以上の安定した高収量を5年間にわたり維持、栽培面積8haあたりで年間約160tの収量を確保している(図3)。立毛乾燥した1月~4月に収穫(図1、中央)することで、水分含量は30%以下となり、ビニールパイプハウス等で保管・自然乾燥により水分含量をさらに10%まで下げることができ、加工効率が優れる。
- 木質を50%含む、草本系エリアンサスペレット燃料(タカノ社製造)は高い品質を確保できる。木質ペレットとしての品質基準を満たし(表1)、灰には肥料有害成分や産業廃棄物有害成分は含まれていない。エリアンサスから乾物収量と低位発熱量から換算して年間318 GJ/haの熱量供給が可能である。
- 温泉施設「もとゆ温泉」のバイオマスペレット燃料ボイラー導入前の灯油消費量である年間102kL(灯油1Lの熱量36.7MJとして、3,700 GJ)をバイオマスペレット燃料で置き替えている。ペレット燃焼によるCO2排出量は363tとなるが、再生エネルギーであるため、実質のCO2排出量はゼロ(カーボンニュートラル)となる。
普及のための参考情報
- 普及対象:バイオマスペレット燃料生産者、温泉給湯事業者、普及指導機関。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:関東以西の非積雪地帯の100~1000 ha
- その他:
バイオマスペレット燃料は灯油と同等(燃焼カロリーベース)の価格で販売されている。エリアンサス品種「JES1」は、農研機構と国際農研が共同で育成し、品種登録した(品種登録出願公表第27533号)。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、委託プロ(地域バイオマス)、 その他外部資金(NEDO)
- 研究期間:2006年~2020年
- 研究担当者:
小林真、松波寿弥、高野誠((株)タカノ)、高野啓子((株)タカノ)、安藤象太郎、寺島義文(国際農研)、霍田真一、佐藤広子、蝦名真澄
- 発表論文等:Matsunami H. et al.(2018)Bioenergy Res. 11:467-479