豚雌性繁殖形質間の因果構造を利用した里子処置に影響されない遺伝的能力評価モデル
要約
豚の生存産子数は21日齢生存頭数および21日齢腹体重に影響し、21日齢生存頭数は21日齢腹体重に影響するという因果関係があり、この因果構造を反映させた統計モデルによって、生存産子数の影響を取り除いた21日齢生存頭数および21日齢腹体重の遺伝的能力が評価できる。
- キーワード:豚、雌性繁殖形質、表型値間因果構造、構造方程式
- 担当:畜産研究部門・家畜育種繁殖研究領域・家畜育種ユニット
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
種豚生産においては、子豚の生存率向上を目的とした里子処置によって生存産子数を人為的に調整することがあるが、そのようなデータは離乳時生存頭数および離乳時腹体重の遺伝的能力評価に用いることができない。そこで、本研究では豚の雌性繁殖形質の表型値間の因果関係を解明し、その構造方程式を利用することで、里子処置に影響されない離乳時形質の遺伝的能力を評価できる統計モデルを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 離乳時生存頭数、腹体重の指標としてそれぞれ、21日齢生存頭数、21日齢腹体重を用いる。
- 豚繁殖形質間の因果構造解明には、多形質アニマルモデルから得られる残差分散共分散にInductive Causationアルゴリズムを適用して骨格構造を得て、それに時間的情報、生物学的情報を付加する手法を用いる。分析はランドレース種1集団および大ヨークシャー種1集団それぞれで分析をする。
- 豚の生存産子数の表型値は21日齢生存頭数および21日齢腹体重の表型値に影響し、21日齢生存頭数の表型値は21日齢腹体重の表型値に影響する(図1)。また、因果構造はランドレース種および大ヨークシャー種で共通である。
- 21日齢生存頭数の共変量に生存産子数または哺育開始頭数、21日齢腹体重の共変量に生存産子数または哺育開始頭数および21日齢生存頭数とした構造方程式を統計モデルとして用いることで、生存産子数の表型値に影響されないこれらの形質の遺伝的能力を分離できる。
成果の活用面・留意点
- 21日齢生存頭数の共変量に生存産子数または哺育開始頭数、21日齢腹体重の共変量に生存産子数または哺育開始頭数および21日齢生存頭数とした統計モデルによって、里子処置したデータも遺伝的能力評価に用いることが可能である。
- ランドレース種1集団および大ヨークシャー種1集団のデータから共通の因果構造が得られたが、この構造が他の品種や集団で共通しているとは限らない。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金、戦略プロ(家畜育種手法)
- 研究期間:2018~2020年度
- 研究担当者:
岡村俊宏、石井和雄、西尾元秀、Guilherme J. M. Rosa(University of Wisconsin)、佐藤正寛(東北大学大学院)、佐々木修
- 発表論文等: