ブタ筋肉内粗脂肪含量の指標となる血中分岐鎖アミノ酸
要約
ブタ血中の代謝物である分岐鎖アミノ酸濃度の高さは、豚の筋肉内脂肪含量の高さを推定する指標となるため、育種効率化が期待される。
- キーワード:豚肉質、筋肉内脂肪含量、メタボロミクス、分子マーカー、分岐鎖アミノ酸
- 担当:畜産研究部門・家畜育種繁殖研究領域・家畜ゲノムユニット
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
豚肉質のうち筋肉内脂肪含量(IMF)は食味や食感に影響するため、最も重視される形質の一つである。しかし、と畜後に化学的分析を行う必要があるため、肥育中の豚生体からIMFを推定できる手法の開発が望まれる。そこで、本研究では、キャピラリー電気泳動質量分析(CEMS)を用いて、高低IMF群間で差異を示す血中代謝物を網羅的に解析し、IMFと関連するものを特定することにより、と畜前に豚肉質の評価を可能とする指標の開発につなげる。
成果の内容・特徴
- 材料と方法:家畜改良センター宮崎牧場および茨城牧場のデュロック種、各10頭について、出荷前日の血清を用いたメタボローム解析を行う。
- 筋肉の合成に関わる分岐鎖アミノ酸のロイシン、イソロイシン、バリン濃度は、低IMF群に比べ、高IMF群の血中で高い(表1)。
- 高IMF群は低IMF群に比べて、分岐鎖アミノ酸、および、その代謝産物の血中濃度が有意に高い、あるいはその傾向が認められる(図1)。
成果の活用面・留意点
- 本研究により、ブタIMF推定の指標として、血中の分岐鎖アミノ酸濃度の利用可能性がある。
- 本成果は遺伝および環境の影響を考慮し、2農場での結果をもとにしているが、例数が小さいため、より大規模な集団を用いた解析により、分岐鎖アミノ酸のIMFへの効果を検証する必要がある。
- 民間養豚場レベルでの実用化に向けては、血中成分が飼料成分の影響を受けることに留意する必要がある。
- 肥育の早期にストレスの無い方法で採血、あるいは他種の生体サンプル(唾液、糞尿など)による、簡易で迅速な分岐鎖アミノ酸測定技術の開発が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分:先導プロ(国産豚肉質改良)
- 研究期間:2016~2020年度
- 研究担当者:
谷口雅章、荒川愛作、西尾元秀、岡村俊宏、石井和雄(農研機構畜産)、大西知佳、門脇宏遠、小平貴都子、本間文佳、松本和典(家畜改良センター)
- 発表論文等:Taniguchi M et al. (2020) 10(8), 322;
doi: 10.3390/metabo10080322