換気窓連動の二酸化炭素施用により暖地トルコギキョウ冬季生産における収益が向上する

要約

暖地でのトルコギキョウ冬季生産において、高昼温管理と組み合わせて日中の光の強い時間帯に二酸化炭素施用を行うとき、換気窓閉鎖時に高濃度、開放時に低濃度と施用濃度を切り替えることで切り花品質や出荷率が向上し、収益が増加する。

  • キーワード:トルコギキョウ、二酸化炭素施用、切り花品質、収益性、高日照地域
  • 担当:野菜花き研究部門・花き生産流通研究領域・生産管理ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6811
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

冬季温暖な高日照地域である暖地におけるトルコギキョウの生産は主に冬春出荷作型を中心に行っている。この作型では、開花遅延の回避や花蕾数の確保による品質向上が課題となっている。二酸化炭素施用(CO2施用)はこれらの解決につながる可能性のある技術である。トルコギキョウ冬季生産において生育・開花促進のための高昼温管理の普及が進みつつあるが、CO2施用は普及していない。理由として、暖地では冬季であっても気温調節のために昼間は換気窓が開くことが多く、施用の継続が困難となることが挙げられる。そこで、換気窓開閉と連動して設定濃度を切り替えて日中のCO2施用を継続する方法を開発し、暖地のトルコギキョウ生産温室において本方式による施用を行って、品質、経済性両面から効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 換気温度を30°Cに設定し、8時~15時をCO2施用時間帯とする。換気窓開閉とCO2施用装置を連動させ、窓閉鎖時に700ppmで施用を行い、開放時には430ppmと濃度設定を切り替えて連続施用する(図1)。CO2ガスは送風機によって株元近傍へダクト施用を行う。
  • 施用区の温室の日中CO2濃度は、換気窓が閉鎖した曇天日だけでなく、換気窓開放がある晴天日であっても対照区に比べて高い濃度で推移する(図2)。
  • 対照区と施用区の生育を比較すると、CO2施用によって地上部新鮮重、茎径、花蕾数の増加が認められる(表1)。
  • CO2施用によりブラスチングによる未開花等の出荷規格に満たない個体が減少するため、定植本数に対する出荷率が「ボヤージュホワイト」10月定植栽培では対照区78%に対し施用区92%、11月定植栽培では対照区89%に対し施用区93%と向上する(表2)。
  • 「ボヤージュホワイト」について、品質の最も高い区分である秀品率が10月定植栽培の対照区では57%に対し、施用区では78%、11月定植栽培の対照区では36%に対し施用区では73%となる。
  • 収益性について「ボヤージュホワイト」を例に試算すると、施用区では出荷率向上および上位等級品割合増加による切り花平均販売価格の増加により粗収益が増加し、施用にかかるコストおよび出荷販売経費の増加を考慮してもCO2施用によって単位面積あたりの収益が増加する(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:花き生産者、生産法人等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:関東以西冬季高日照地域(1月の月間日照時間200時間程度)に3,500a
  • その他:本試験では両区とも白熱電球による長日処理は行っていない。「ピッコローサスノー」についても効果を確認した。なお、収益性の試算については特定の年次の実証圃場での事例を元に算出している。切り花単価は市場動向によって変動するため、収益はその影響で変化する可能性がある。

具体的データ

図1 二酸化炭素施用方法,図2 温室内部の日中二酸化炭素濃度推移(静岡県内実証圃場),表1 「ボヤージュホワイト」の草丈、地上部新鮮重、分枝数、茎径および花蕾数z,表2 実証圃場における「ボヤージュホワイト」のCO2施用による収益性に対する効果の試算

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2012~2018年度
  • 研究担当者:牛尾亜由子、福田直子、島地英夫(東京都農総試)
  • 発表論文等:
    • 牛尾ら(2018)植物環境工学、30(2):103-114
    • 牛尾「二酸化炭素施用制御装置、二酸化炭素施用装置、二酸化炭素施用方法およびプログラム」特許6378872号(2014年7月10日)