ルテイン含量の保持とシュウ酸除去のバランスを考慮したホウレンソウのゆで調理法

要約

ホウレンソウのゆで調理において、機能性成分であるルテイン含量を保持し、シュウ酸を減少させるための最適条件は100°C、120秒であり、この条件ではルテインは77%保持され、シュウ酸は67%除去される。

  • キーワード:ホウレンソウ、ルテイン、シュウ酸、ゆで調理
  • 担当:野菜花き研究部門・野菜病害虫・機能解析研究領域・品質機能ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8011
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

2015年4月より施行された機能性表示食品制度により生鮮食品の機能性表示が認められたにもかかわらず、登録数が伸び悩んでいることから、より多くの生鮮食品の登録が求められている。ホウレンソウに含まれる機能性関与成分ルテインは、「光による刺激から目を保護するとされる網膜(黄斑部)色素を増加させる」ことが報告されており、ホウレンソウを機能性表示食品として登録することは可能であるが、摂取の方法として加熱調理が必要であるため、調理加工時の減少率を考慮した機能性関与成分の含有量保証が求められる。一方、ホウレンソウにはアクの原因となるシュウ酸が含まれているため、一般的にアクを低減する目的でゆで調理が行われている。機能性利用の観点ではルテインの調理による減損は少ないことが望ましいことから、ホウレンソウのゆで条件の違いによるルテイン、シュウ酸の残存特性を調べ、機能性利用に適したゆで条件を検討する。

成果の内容・特徴

  • ルテインおよびシュウ酸含量に対する、ゆで調理時の温度、時間の影響を検討したところ、調理前に比べて、ルテインは96%(60°C、30秒)から67%(100°C、180秒)、シュウ酸は72%(60°C、30秒)から27%(100°C、180秒)の範囲で、調理温度が高く、ゆで時間が長いほど減少する(図1、2)。
  • ルテイン含量を保持し、シュウ酸を除去するのに最適なホウレンソウのゆで条件は100°C、120秒であり、この条件下ではルテインは77%が保持されるのに対し、シュウ酸は67%除去される。
  • ルテインの保持とシュウ酸の除去のみを考慮する場合、ゆで条件は60°C、30秒から100°C、120秒の範囲で選択が可能である。

成果の活用面・留意点

  • ホウレンソウの一般家庭での調理応用を想定し、本研究ではホウレンソウ(1株=約21g)を3Lの設定温度の湯に入れ、IH調理器で加熱後、素早く水道水にさらし、手で絞り、供試している。

具体的データ

図1 ホウレンソウの下茹で条件がルテインに及ぼす影響,図2 ホウレンソウの下茹で条件がシュウ酸に及ぼす影響

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(27補正「地域戦略」プロ)
  • 研究期間:2016~2018年度
  • 研究担当者:王政、上田浩史
  • 発表論文等:Wang Z. et al. (2018) Food Sci. Technol. Res. 24(3):421-425