水田転換畑でのプラウ耕体系とスナッパヘッダを用いた子実用トウモロコシの高速作業体系

要約

水田転換畑での子実用トウモロコシ栽培では、播種床造成をロータリ耕体系からプラウ耕体系に変えることで収量を維持しつつ高速作業が行え、倒伏による被害を軽減でき、収穫にトウモロコシキットを装着した国産汎用コンバインにスナッパヘッダを装着することで高速化が可能である。

  • キーワード:子実用トウモロコシ、プラウ耕、スナッパヘッダ、水田転換畑、耐倒伏性
  • 担当:東北農業研究センター・生産基盤研究領域・栽培技術グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

水田の有効・高度活用と国産濃厚飼料の増産という背景から、新たな転作作物として子実用トウモロコシが注目されている。そこで、大豆などより省力的な土地利用型作物である子実用トウモロコシの生産現場への導入・普及を進めるために、大規模経営体に対応した圃場作業の高速・省力化を図ることが求められている。そこで、水田転換畑において耕種農家を対象とした子実用トウモロコシの栽培と収穫における高速作業体系を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 排水対策を行った後、プラウ耕体系(チゼルプラウで粗耕起後にパワーハローで砕土・整地する体系)で播種床を造成した後、大豆等の播種で用いられている点播が可能な播種機を用いて播種し、雑草防除は、播種直後の土壌処理剤と出芽後に散布する茎葉処理体系を基本とし、収穫はトウモロコシキットを装着した国産汎用コンバインにスナッパヘッダを装着して行う(図1)。
  • 水田転換畑においてプラウ耕体系で栽培したトウモロコシは、子実収量がロータリ耕体系と同程度であり、倒伏はロータリ耕体系より少ない傾向である(表1)。現地実証試験において播種床造成と播種に係る延作業時間はロータリ耕体系からプラウ耕体系に変えることでそれぞれ1.3時間/10aから0.34時間/10aに74%、0.4時間/10aから0.15時間/10aに63%短縮される(表略)。
  • 現地実証試験の水田転換畑(岩手県花巻市、グライ土)においてプラウ耕体系で栽培したトウモロコシはロータリ耕体系より台風等による倒伏程度が顕著に少ない(図2)。同様の結果は東北研(岩手県盛岡市、黒ボク土)でも認められる(表1)。
  • 子実用トウモロコシの収穫は、トウモロコシキットを装着した国産汎用コンバインにスナッパヘッダを装着することで、リールヘッダと比較して収穫に係る作業時間が0.33時間/10aから0.25時間/10aに約25%短縮される(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:直播水稲や大豆等を栽培する100 ha以上の大規模水田作経営体。規模拡大に伴い省力的な管理作業が可能な輪作作物の導入を検討している生産者や大豆の連作障害等が課題の生産者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北以南。東北以南では、東北地域を中心に子実用トウモロコシの栽培面積は2019年時点で約100 haである。
  • 水田転換畑でのプラウ耕による倒伏軽減効果は2019年度研究成果情報「水田転換畑でのプラウ耕によるトウモロコシの倒伏軽減効果」を参照のこと。国産汎用コンバインに装着したスナッパヘッダの収穫精度については2020年度研究成果情報「国産汎用コンバインでのスナッパヘッダ利用」を参照のこと。国産子実用トウモロコシの生産と調製に係る費用は2020年度研究成果情報「国産子実用トウモロコシの生産と調製に係る費用」を参照のこと。
  • 子実用トウモロコシの栽培を始めるには販売先の確保が必要である。本成果は、岩手県花巻市での現地実証試験と東北研(岩手県盛岡市)で得られた成果である。国産汎用コンバインに装着可能なスナッパヘッダは農機メーカー1社から市販されている。
  • 水田転換畑での子実用トウモロコシ栽培は圃場の排水性を確保する必要があり、暗渠が機能し、額縁明渠やサブソイラを施工できる圃場が望ましい。本成果における現地実証試験では、堆肥(豚糞堆肥、汚泥堆肥)と化成肥料を組み合わせて使用しており、施肥基準は各県の飼料用トウモロコシに準ずる。

具体的データ

図1 水田転換畑における子実用トウモロコシの高速作業体系,表1 子実用トウモロコシの坪刈収量、全刈収量および倒伏,図2 2017年農家圃場(グライ土)における台風通過後の圃場の様子と倒伏程度,表2 現地圃場における収穫の作業時間

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)、その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2014~2020年度
  • 研究担当者:篠遠善哉、金井源太、宮路広武、幸田和也、松波寿典、大谷隆二、丸山幸夫(筑波大)
  • 発表論文等:
    • 篠遠ら(2017)日作紀、86(2):151-159
    • Shinoto Y. et al. (2019)Plant Prod. Sci. 22:58-67
    • 篠遠ら(2019)根の研究、28:59-67
    • 金井ら(2020)農業食料工学会誌、82:418-420