営農再開地域の小規模圃場に向けた中大型哺乳類用の侵入防止柵

要約

複数の獣種用の技術を組み合わせることで、単独で多獣種の侵入を防止する柵である。当該柵は除草等の困難化の原因となる接地部構造の複雑化が生じない。また、イノシシが最も接触しやすい位置に電気柵線を配置するため、通常の物理柵よりも高い侵入防止効果が期待できる。

  • キーワード:獣害対策、侵入防止柵、営農再開、小規模圃場
  • 担当:東北農業研究センター・農業放射線研究センター・営農再開グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

地理的に孤立する可能性が高い営農再開農地は獣害リスクが高いうえに、近年はイノシシ、ニホンザル、ハクビシン、アライグマなど行動特性が異なる種がリスク要因となっていることから、より効果が高く、多獣種に対応できる侵入防止柵が求められている。そこで、複数の獣種用の既往技術を組み合わせ、単独で多獣種に対応できる柵を設計し、野生動物に提示する実験をおこなうことで設計の有効性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 設計した侵入防止柵は、イノシシ・ニホンジカ・ニホンザル用として実績のある溶接金網柵+"おじろ用心棒"を基本構造とする(図1)。これに、タヌキ・アライグマ・ハクビシン等の中型哺乳類対策としてプラスチックネットを溶接金網部に裏打ちし、登攀能力に優れるハクビシン・アライグマ対策としてすり抜け防止柵線を追加する。さらに、イノシシ等に対する侵入防止効果を高めるため、高さ30cmの位置に突き出し構造の碍子と最下段電気柵線を懸架する。
  • 異なる獣種用の柵を多重に設置する従来の方法と異なり、当該柵では一般的なイノシシ用物理柵に使われる溶接金網に追加の要素を懸架するため、除草等の困難化の原因となる接地部構造の複雑化が生じない(図1)。
  • 誘引餌によって侵入意欲が高い状態でも、営農再開地域で懸念されるイノシシ・ニホンザル・ハクビシン・アライグマの侵入を防止できる(表1)。
  • イノシシは突き出し部(図1)から探査を始める傾向がある(表2)。この時、突き出し部の先端だけに接触する場合や、他の部位であってもごく短時間しか接触しない場合が多いため、先端部まで通電帯になっている部材を使用したり、電流パルス間隔が十分短いまま保てるソーラータイプの電気柵本器を使用したりすることで、感電可能性を高められる(図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:営農再開地域の生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:営農再開地域の小規模圃場など

具体的データ

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2016~2020年度
  • 研究担当者:藤本竜輔、竹内正彦
  • 発表論文等:農研機構(2021)「営農再開地域の小規模圃場に適した中大型哺乳類用の侵入防止柵設営」(2021年公開予定)