スナッパヘッダを装着した国産汎用コンバインでトウモロコシ子実の収穫能率が向上する

要約

国産汎用コンバインによるトウモロコシ子実収穫において、リールヘッダの収穫条数2条、作業速度約1.0 m/sに対して、スナッパヘッダでは収穫条数3条、作業速度1.3~1.4 m/sで収穫できる。穀粒の損失および損傷率も同程度で、単純計算で約2倍となる大幅な能率向上が期待できる。

  • キーワード:コンバイン、スナッパヘッダ、トウモロコシ、収穫精度、作業速度
  • 担当:東北農業研究センター・農業放射線研究センター・営農再開グループ、東北農業研究センター・生産基盤研究領域・栽培技術グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

国産トウモロコシ子実の生産が注目されつつあり、都府県では主にリールヘッダを装着した国産汎用コンバインが用いられている。しかし、トウモロコシの海外主要産地では、ヘッダ交換式の普通コンバインが中心という理由もあり、トウモロコシ収穫時には安定した収穫性能が確保できるスナッパヘッダを用いている。そこで、本研究では、脱穀選別部に茎葉が入らず、高速作業と選別精度の確保が期待できるスナッパヘッダ(改造ベース部品:KIJ VANICH社(タイ)製3条刈仕様)を国産汎用コンバインに試験的に取付け(図1)、収穫試験を行い、収穫性能を明らかにする。予備試験によりリールヘッダは2条刈、作業速度約1.0 m/s、スナッパヘッダは3条刈、作業速度約1.3 m/sが適切との知見を得ているが、リールヘッダの収穫速度および収穫条数と同様の条件(2条刈、収穫速度約1.0 m/s)でのスナッパヘッダの収穫性能もあわせて示す。

成果の内容・特徴

  • 収穫精度試験の一般的な手法に従い折損株を取り除いた試験区での収穫試験に基づきヘッダ部分での取り落としによる損失である頭部損失割合について、リールヘッダとスナッパヘッダで比較を行ったところ、いずれも1%以下と十分に低い水準を示している(図2)。リールヘッダの場合は、頭部損失について十分低い範囲であるが、ばらつきが見られる。
  • 脱穀選別損失について、リールヘッダおよびスナッパヘッダによる2条刈と3条刈での比較によると、リールヘッダとスナッパヘッダ(3条刈)は同等で十分に低い値を示している(図3)。スナッパヘッダ(2条刈)では、茎葉がこぎ胴に入らないこともあり、適切なこぎ胴流量よりも少なく、脱穀選別損失とともに損傷(図4)が高い値を示す事例がある。
  • リールヘッダ刈幅は208cmで、条間76cmで3条刈とすると3条目がヘッダにうまく入らず、つまりの要因となるため2条刈が適切であるが、スナッパヘッダでは、茎を把持するため3条刈仕様とすることができ、さらに脱穀選別部に茎葉が入らず、こぎ胴の負荷が軽減できることから、リールヘッダで約1.0 m/sであった作業速度も1.3~1.4 m/sとできる。従って、収穫能率として単純計算で約2倍となり、大幅な能率向上が期待できる。

成果の活用面・留意点

  • 本情報は、国産汎用コンバインにおけるスナッパヘッダ利用の利点を示しており、トウモロコシ子実収穫時にはスナッパヘッダに交換利用する機械体系の研究開発に活用できる。
  • ヘッダの違いが頭部損失に与える影響は認められないが、スナッパヘッダの方が倒伏や折損株でも雌穂脱落が少ない様子が観察されており、頭部損失が発生しやすい条件での検討を要する。
  • 純正品ではないヘッダを利用しており、機体の耐久性の検討が必要である。また、収穫能率について、排出や枕地処理など、圃場単位での能率向上効果は、別途、検討が必要である。

具体的データ

図1 トウモロコシ子実収穫用に改造した国産コンバイン,図2 収穫速度と頭部損失割合,図3 製品口流量と脱穀選別損失,図4 製品口流量と損傷率および異物割合

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)、その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2018~2020年度
  • 研究担当者:金井源太、篠遠善哉、山下善道
  • 発表論文等:金井ら(2020)農業食料工学会誌、82:418-420