水田転換畑においてチゼルプラウ耕で栽培したトウモロコシの根系の特徴

要約

水田転換畑においてチゼルプラウ耕で栽培したトウモロコシの根系はロータリ耕と比較して、土壌深さ5 cm以上の土壌貫入抵抗値が高いため第7葉期頃から浅根化するが、根長密度および根の生理的活性を示す出液速度には差がみられない。

  • キーワード:チゼルプラウ耕、水田転換畑、トウモロコシ、浅根化、根長密度
  • 担当:東北農業研究センター・生産基盤研究領域・栽培技術グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

水田の有効・高度活用および国産濃厚飼料増産のため、新たな転作作物として栽培管理作業の少ない子実用トウモロコシの栽培が水田転換畑で始まっている。水田転換畑における子実用トウモロコシ栽培では慣行耕起法であるロータリ耕体系よりチゼルプラウ耕体系(チゼルプラウで粗耕起後におパワーハローで砕土・整地する体系)で栽培される場合が多い。水田転換畑におけるチゼルプラウ耕はロータリ耕より土壌が硬く、耐倒伏性が向上することが明らかにされている。しかし、水田転換畑においてチゼルプラウ耕で栽培した際のトウモロコシの根系は明らかにされていない。そこで、本研究では黒ボク土とグライ土の水田転換畑においてチゼルプラウ耕体系でトウモロコシを栽培し、その根系をロータリ耕体系と比較して、明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 黒ボク土における土壌貫入抵抗値は、チゼルプラウ耕では土壌深さ5 cm以上で急激に増大し、ロータリ耕より大きい(図1)。
  • 黒ボク土の水田転換畑において、チゼルプラウ耕はロータリ耕と比較して、第7葉期頃から、根系の平均的な深さを示す根の深さ指数が低くなり、浅根化する(図2)。無施肥区のチゼルプラウ耕において第7葉期以降に浅根化したことから、浅根化した要因は土壌深さ5 cm以上の土壌貫入抵抗値がチゼルプラウ耕で高かったことによる。
  • 黒ボク土の成熟期とグライ土の乳熟期において、チゼルプラウ耕はロータリ耕と比較して、根の深さ指数が0.7-1.6 cm低く、根系が浅く分布する(図3)。
  • 生育期間を通じて、根長密度にロータリ耕とチゼルプラウ耕による差はみられない(図4a、b)。
  • 生育期間を通じて、根の生理的活性を示す出液速度にロータリ耕とチゼルプラウ耕による差はみられない(図4c)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、水田転換畑でトウモロコシを栽培する際の基礎資料として活用できる。
  • 本成果は、黒ボク土(岩手県盛岡市、農研機構東北農業研究センター)と細粒質グライ土(岩手県花巻市、農家圃場)において、水稲後の転換畑で実施したものである。水田転換畑でトウモロコシを栽培する際には、暗渠が施工されており、排水対策として額縁明渠、サブソイラを施工することが望ましい。
  • チゼルプラウ耕体系は、チゼルプラウ耕(黒ボク土:耕深20cm、グライ土:耕深15cm)で粗耕起後にパワーハロー(黒ボク土、グライ土:耕深5cm)で表層を砕土する体系である。ロータリ耕の耕深は、黒ボク土では20cm、グライ土では12-13cmである。

具体的データ

図1 黒ボク土における2016年(a)と2017年(b)の土壌貫入抵抗値,図2 生育時期別の根の深さ指数,図3 黒ボク土(a)およびグライ土(b)における根の深さ指数,図4 黒ボク土(a)およびグライ土(b)における根長密度の推移と黒ボク土における出液速度の推移(c)

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)
  • 研究期間:2015~2017年度
  • 研究担当者:篠遠善哉、丸山幸夫(筑波大)、松波寿典、大谷隆二
  • 発表論文等:
    • 篠遠ら(2017)日作紀、86:151-159
    • 篠遠ら(2018)根の研究、27:10-16
    • 篠遠ら(2019)根の研究、28:59-67
    • Shinoto Y et al. (2021) Plant Prod. Sci. 24: 297-305.