子実用トウモロコシの子実含水率に与える気象と品種の影響と推定精度の評価

要約

黄熟期から完熟期までの期間におけるトウモロコシの子実含水率には気温、相対湿度、風速が強く影響し、子実含水率の推移には品種間差がある。気温、相対湿度、風速、品種の4つの要因を用いた推定式により、気温のみを用いた従来の推定式よりも高い精度で子実含水率を推定できる。

  • キーワード:子実用トウモロコシ、子実含水率、推定
  • 担当:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域・飼料生産グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

耕種農家が子実用トウモロコシ栽培を導入する上では、トウモロコシの収穫期が水稲やダイズと重なるため、効率的な収穫作業が求められている。複数の圃場で子実用トウモロコシを栽培する場合、収穫適期を迎えた圃場から順に作業することで効率的な作業ができるため、圃場ごとの収穫適期を把握することが必要である。従来、積算気温を用いた子実含水率から収穫適期の推定が試みられてきたものの、子実含水率の推定にはより高い精度が求められる。そこで、本研究では子実含水率に与える気温、相対湿度、風速、日射量、品種の影響を調べるとともに、影響の強い要因を用いた推定式の推定精度を調べる。

成果の内容・特徴

  • 気温と相対湿度と風速はトウモロコシの子実含水率に強く影響し、気温が高く、相対湿度が低く、風速が速い環境で子実含水率がより速く低下する。一方で、日射量の子実含水率への影響は比較的に弱い(表1)。
  • 絹糸抽出期からの積算気温と積算相対湿度と積算風速と各品種の効果を変数とした共分散分析から得た下記の推定式では平均平方二乗誤差が1.1%であり、従来の積算気温のみを用いた推定式の時の2.8%と比較して推定精度が高い(図1、2、表2)。
    M = αT + βH + γW + C + I
    上式におけるMは子実含水率(%)、Tは積算気温(°C)、Hは積算相対湿度(%)、Wは積算風速(m/s)、Iは切片を表す。α、β、γは連続変数である積算気温、積算相対湿度および積算風速の係数をそれぞれ表す。Cはカテゴリー変数であり、各品種の効果を表す。
  • 2017年と2018年に採取し、推定式の作成に用いなかったデータにおいても平均平方二乗誤差が1.7%となり、推定精度が高い。

成果の活用面・留意点

  • 気象データを基に、対象となる圃場のトウモロコシ収穫適期の推定に活用できる。
  • 本試験と異なる栽培条件での推定精度は、別途検討する必要がある。本試験は盛岡で2015年から2018年に行っており、播種は5月下旬に行い、基肥として窒素とリン酸とカリをそれぞれ15kg/10a、30kg/10a、15kg/10a施用している。

具体的データ

表1 絹糸抽出期からの積算気温、積算相対湿度、積算風速の子実含水率への影響を解析した重回帰分析の結果,図1 解析用データにおける気温のみを用いた子実含水率の推定値と実測値との関係,図2 解析用データにおいて気温と相対湿度と風速と品種を用いた子実含水率の推定値と実測値との関係,表2 共分散分析によって得られた推定式の係数と品種ごとのカテゴリー変数

その他

  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2015~2019年度
  • 研究担当者:藤竿和彦、内野宙、藤森雅博、出口新
  • 発表論文等:藤竿ら(2021)日草誌、66:200-208