北海道・東北地域に適したダブルローナタネ品種「ペノカのしずく」

要約

「ペノカのしずく」は北海道および東北地域に適したナタネ品種であり、成熟期および収量は「キザキノナタネ」と同程度である。種子中にエルシン酸を含まず、かつグルコシノレート含量が少ないダブルローの特性を持つため、油は食用に適し、搾り粕を飼料として利用することができる。

  • キーワード:ナタネ、無エルシン酸、低グルコシノレート、ダブルロー
  • 担当:東北農業研究センター・畑作園芸研究領域・畑作物育種グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

国産ナタネは輪作作物や転作作物として作付面積が増加傾向にある。主力品種である「キザキノナタネ」は種子中にエルシン酸を含まないので食用油に適しているが、グルコシノレート含量が多く搾り粕を飼料として利用しにくいことから販路が限られている。既存のダブルロー品種には東北地域向けの「キラリボシ」、「きらきら銀河」があるが、寒雪害抵抗性や菌核病抵抗性が「キザキノナタネ」より劣っているために、特に北海道での普及が滞っている。そこで、「キザキノナタネ」並みの栽培特性を持つ多収のダブルローナタネ品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「ペノカのしずく」は、農研機構東北農業研究センターにおいて、2011年に多収のダブルロー系統「OZ028-2」を種子親、北海道および東北地域における無エルシン酸の主力品種「キザキノナタネ」を花粉親として交配を行い、選抜を重ねて育成した品種である。
  • 育成地(岩手県盛岡市)において、成熟期は「キザキノナタネ」と同程度、「キラリボシ」より1日遅い。草丈は「キザキノナタネ」や「キラリボシ」より高い(表1、写真1)。寒雪害抵抗性および菌核病抵抗性は、「キザキノナタネ」と同程度で「キラリボシ」より強く、いずれも"強"である(表1)。
  • 育成地において、子実収量が「キザキノナタネ」と同程度であり、「キラリボシ」より3割以上多収である(表2)。千粒重は「キザキノナタネ」と同程度で「キラリボシ」より大きく、含油率は「キザキノナタネ」および「キラリボシ」と同程度である(表2)。種子中にエルシン酸を含まないので食用油に適しており、グルコシノレート含量が少ないので搾り粕を飼料として利用しやすい(表2)。
  • 北海道において、成熟期は「キザキノナタネ」と同程度、寒雪害抵抗性および菌核病抵抗性も「キザキノナタネ」と同程度であり、子実収量は「キザキノナタネ」と同程度~やや多収、「キラリボシ」より3割以上多収である(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 栽培適地は北海道および東北地域であり、今後、約1,000haの普及が見込まれている。ダブルローナタネの搾り粕は数少ないタンパク質豊富な国産飼料の一つであり、飼料業界の振興に貢献できる。
  • 他のナタネ品種およびアブラナ科植物との交雑防止のため、隔離された採種圃場で種子増殖する。一般栽培では、採種圃由来の種子を使用する。

具体的データ

表1 育成地における「ペノカのしずく」の栽培特性(岩手県盛岡市、2017~2018年度),表2 育成地における「ペノカのしずく」の収量・品質特性(岩手県盛岡市、2017~2018年度),図1 北海道における「ペノカのしずく」の子実収量比(2017~2018年度),写真1 「ペノカのしずく」の草姿

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(H28補正「経営体プロ」)
  • 研究期間:2011~2019年度
  • 研究担当者:川崎光代、本田裕、石黒浩二、大塚しおり、原尚資、根本英子
  • 発表論文等:川崎ら「ペノカのしずく」品種登録出願公表第34706号(2020年8月3日)