水稲乾田直播栽培のノビエ防除支援システム

要約

本システムは、水稲乾田直播栽培においてノビエの適期防除を支援するために、簡易な操作で指定日のノビエの最大葉齢を推定して表示するシステムである。圃場毎に入力した播種日や防除日を起点として、日平均気温から7°Cを控除値とする有効積算温度によって葉齢を推定する。

  • キーワード:乾田直播栽培、作業支援システム、ノビエ、有効積算温度、葉齢予測
  • 担当:西日本農業研究センター・水田作研究領域・栽培管理グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

水稲の乾田直播栽培では、乾田期間の水稲生育初期における雑草防除が重要である。除草剤を適期散布するためには対象とする雑草(ノビエ)の最大葉齢(圃場内で生育の最も進んだ個体の葉齢)を把握することが重要であるが、これを圃場で観察により把握することは現実的に困難である。
そこで、本研究では日平均気温からノビエ葉齢を推定する式を策定し、圃場毎に指定した日付のノビエの最大葉齢が表示でき、適期防除を支援できる「ノビエ防除支援システム」を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムはMicrosoft Excelで開発しており、利用者は主に「圃場・作業シート」、「気温シート」を利用する(図1)。「圃場・作業シート」では、対象圃場の名称、使用する気温データの番号を設定し、播種日や防除日を入力する。入力された播種日や防除日を起点とし、指定した日付のノビエ葉齢を推定し表示する。また、イネの出芽前に処理する非選択性除草剤散布支援のため、イネ出芽の目安となる播種後の有効積算温度(控除値11.5°C)も併せて表示する。
  • 本システムは、農研機構メッシュ農業気象データシステムと連動させて使用する。これにより気温データの更新が簡便に実行できるとともに、日平均気温として最長26日先までの予報値が利用でき、平年値を利用するより推定精度の向上が期待できる。「気温シート」では最大10件の日平均気温データが設定でき、1ファイルで複数地区の管理に対応する(図1)。また、同一地点の過年度の気温データを選択すれば、ノビエ葉齢進展の年次間比較も可能である。
  • ノビエの葉齢は日平均気温から7°Cを控除値とする有効積算温度によって推定する。乾田直播栽培において、ノビエの生育起点には耕起により既発ノビエを枯殺する場合(耕起起点)と除草剤により枯殺する場合(除草剤起点)の2通りがあり、後者のノビエの葉齢進展が早い。葉齢推定では起点別に作成した推定式を利用する(図2)。
  • 本システムは、気温データの更新、防除日等の記入、推定日の指定の3ステップで簡易にノビエ葉齢が確認できる(図1)。作業当日だけではなく予測が可能であることから作業適期を見極めることができ、作業計画の策定の参考になる。また、防除日のノビエ葉齢が履歴として残るため、適期防除が実施できていたかを後から確認することができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:乾田直播栽培に取り組む生産者、普及指導機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:近畿、中国、四国地域
  • その他:
    本システムの利用許諾に関しては、農研機構の職務作成プログラム利用に関するお問い合わせを参照のこと。
    本システムの通常の利用形態において使用する農研機構メッシュ農業気象データの利用に際しては別途利用者IDの取得が必要である。 本システムでは、「国土数値情報3次メッシュに対応した農業用気象データをエクセル上に自在に取り込むためのモジュール」(農研機構職務作成プログラム 機構-K16)を許諾を得て使用している。
    利用にあたって推定には誤差が含まれることを留意する。また、生育起点より前に発生しているノビエは生育起点事由の除草剤散布等により取りこぼしなく防除されることが前提である。
    普及予定地域以外での適用のためにはその地域でノビエ葉齢推定式の適合性を検証する必要がある。

具体的データ

図1 ノビエ防除支援システムの「気温シート」、「圃場・作業シート」および使用手順の概略図,図2 有効積算温度と実測最大葉齢の関係から策定したノビエの最大葉齢推定式

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(H28補正「経営体プロ」)
  • 研究期間:2016~2020年度
  • 研究担当者:藤本寛、髙橋英博、橘雅明、浅見秀則
  • 発表論文等:
    • 藤本ら(2022)日作紀、91:39-48
    • 髙橋、藤本(2020)職務作成プログラム「乾田直播雑草防除支援システム」、機構-M25