要約
電子商取引サイトで牛肉を購入する消費者が何に関心を持っているかについては、部位によって違いがある。特にサーロイン等ステーキに用いられることの多い高級部位は品質・赤身への関心が高く、レバー・タン・ホルモンなどの副生物は価格や調理法への関心が高い。
- キーワード : 牛肉部位、消費者評価、レビューデータ、テキストマイニング、電子商取引サイト
- 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畜産研究領域・飼料生産グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
近年、生産者による6次産業化の取り組みの一環として、電子商取引(Electronic Commerce;以下EC)サイトによる牛肉販売が見られるようになっている。そこでは、ホルモン等の副生物を含む牛肉の多様な部位が取り扱われており、今後ECサイトでの牛肉の取引量を拡大するには、副生物を含めた多様な部位に対する消費者ニーズの把握が重要である。そこて ゙、ECサイト(楽天市場)の商品レビューデータに対するテキストマイニング分析から、牛肉部位別の消費者評価の特徴を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ECサイト(楽天市場)の商品レビューデータ(総レビュー数:約8万件)を単語に分割した後、それら単語に基づいて牛肉のレビュー文全体における頻出語を抽出した。次に、対応分析(Correspondence Analysis)により部位のグループ分けを行うとともに、Jaccard係数を用いて各部位の特徴語を抽出した。
- 牛肉レビュー全体における頻出語(表1)の上位には、商品の特性である品質、値段、量に関する語に加え、注文配送、喫食方法、喫食者に関する語が出現している。そのため、ECサイトにおける牛肉の消費者は、これらに対する高い関心を持っている。
- 牛肉の商品レビューに使われる用語と牛肉部位の関係を表す散布図(図1)から、牛肉部位は以下の4つに分類できる。それらは、サーロイン、ヒレ・シャトーブリアン、リブロース、ランプといった「高級部位グループ」、肩ロース、バラ・カルビといった「日常部位(日常的な用途で用いられる部位)グループ」、ホルモン、レバー、ミノ、ギアラ・赤センマイ、ハチノス、ハツといった「手頃な副生物グループ」、タン、モモ、ハラミ、みすじ、スネ、テールといった「中間部位(価格や手頃感が中間的である部位)グループ」である。
- 部位別の特徴語抽出結果(表2)より、「高級部位グループ」ではどれも喫食方法を表す「ステーキ」や品質に関連する用語(「柔らかい」、「赤身」)が特徴的であり、特に肉の軟らかさと赤身が注目される。また、「日常部位グループ」では「すき焼き」や「脂身」、「副生物グループ」では、価格や調理法に関する用語が特徴的である。
- 以上より、ECサイトの利用者は、ステーキ用の高級部位に対しては軟らかさや赤身、日常的な用途で用いられる部位に対しては脂身、副生物に対しては価格や調理法への関心が高い。ECサイトでの牛肉の取引拡大には、これら部位別の特徴を踏まえ、各部位の評価基準となるポイントを商品ラベルなどによって伝える、一緒に食べられることの多い食材やおすすめの調味料などをセットで販売する等が重要である。
成果の活用面・留意点
- 6次産業化に取り組む生産者、及びそのような生産者を支援する行政機関・生産者団体が、ECサイトを用いた牛肉の販売拡大に向けた戦略を策定する際に活用できる。
- 本成果で用いている「部位」は、楽天市場において牛肉関連の商品に紐付けられているジャンルであり、取引規格や小売規格に記載されている「部位」とは異なる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2021~2022年度
- 研究担当者 : 服部明彦、加藤弘祐、山本淳子
- 発表論文等 : 服部ら(2022)農林業問題研究、58(3):141-148