馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズの物性と微細構造に与える水分含量の影響

要約

馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズにおいて、水分含量の違いによるクリーミング効果(粘度上昇)と微細構造の変化を調べる。水分含量がクリーミング効果と微細構造に与える影響を明らかにし、馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズの粘度や硬さ等を有効に改変するための知見を提供する。

  • キーワード:プロセスチーズ、馬鈴薯澱粉、水分含量、食感、微細構造
  • 担当:食品研究部門・食品加工・素材研究領域・食品加工グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

プロセスチーズの製造過程では、目標温度に達した後、シェアリングによる攪拌を続けるとプロセスチーズの粘度が次第に上昇する(クリーミング効果)。プロセスチーズでは、製造条件によりカゼインミセルのネットワークが主にストランドとランダムの二種類の構造をとることが知られている。クリーミング効果が生じる際には、ネットワーク構造がランダムからストランドに変化することでチーズが硬くなる。また、プロセスチーズの硬さに影響を与える重要な因子として、水分含量が考えられる。澱粉は幅広く使われる食感制御素材であり、その量が粘度や硬さ等食感に直接関与する。一般的に、プロセスチーズの製造において水分含量は42-50%に調整され、澱粉添加量は3%を超えない。これまでの研究では、無添加のプロセスチーズより、馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズのほうが粘度と硬さが上昇することが明らかとなっている。馬鈴薯澱粉の吸水による水分含量の変化がプロセスチーズの最終的な品質に影響を与えていると考えられている。馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズの食感への水分含量の影響を明らかにすることで、馬鈴薯澱粉を効率的に使用し、プロセスチーズの粘度や硬さを最適化することが期待される。

成果の内容・特徴

  • 馬鈴薯澱粉を2.5%添加したプロセスチーズは無添加(水分含量は49.5%)よりも硬さが有意に増加する。また、馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズでは、水分含量が低いとき(44.2%)に高い場合(49.1%)と比較して硬い物性を示す(図1)。
  • 図2はプロセスチーズの粘度曲線及び微細構造観察の結果を示す。粘度曲線の横軸は時間、縦軸は粘度と温度を表している。馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズでは、無添加と比較して粘度が上昇し、ランダム構造からカゼインミセルがより凝集した構造に移行することが明らかとなった。また、馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズでは、水分含量が低い場合に粘度がさらに上昇し、それに伴って凝集構造が分散し、ストランド構造が形成される。カゼインミセルのネットワーク構造をランダムからストランド型に変化させることで、プロセスチーズの硬さを向上することができる。

成果の活用面・留意点

  • 馬鈴薯澱粉を用いて、プロセスチーズの粘度や硬さが制御できる。
  • 異なる水分含量による馬鈴薯澱粉添加の効果が期待される。

具体的データ

図1 プロセスチーズの物性評価,図2 プロセスチーズの粘度曲線と電子顕微鏡下での微細構造観察

その他

  • 予算区分:文部科学省(科研費19K15796)
  • 研究期間:2019~2020年度
  • 研究担当者:付惟、中村卓(明治大)
  • 発表論文等:
    • Fu W. and Nakamura T. (2020) Int. Dairy J. 105:104685