馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズにおいて、水分含量の違いによるクリーミング効果(粘度上昇)と微細構造の変化を調べる。水分含量がクリーミング効果と微細構造に与える影響を明らかにし、馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズの粘度や硬さ等を有効に改変するための知見を提供する。
プロセスチーズの製造過程では、目標温度に達した後、シェアリングによる攪拌を続けるとプロセスチーズの粘度が次第に上昇する(クリーミング効果)。プロセスチーズでは、製造条件によりカゼインミセルのネットワークが主にストランドとランダムの二種類の構造をとることが知られている。クリーミング効果が生じる際には、ネットワーク構造がランダムからストランドに変化することでチーズが硬くなる。また、プロセスチーズの硬さに影響を与える重要な因子として、水分含量が考えられる。澱粉は幅広く使われる食感制御素材であり、その量が粘度や硬さ等食感に直接関与する。一般的に、プロセスチーズの製造において水分含量は42-50%に調整され、澱粉添加量は3%を超えない。これまでの研究では、無添加のプロセスチーズより、馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズのほうが粘度と硬さが上昇することが明らかとなっている。馬鈴薯澱粉の吸水による水分含量の変化がプロセスチーズの最終的な品質に影響を与えていると考えられている。馬鈴薯澱粉を用いたプロセスチーズの食感への水分含量の影響を明らかにすることで、馬鈴薯澱粉を効率的に使用し、プロセスチーズの粘度や硬さを最適化することが期待される。