要約
仕事をした日の達成度について自己評価※が高い人は、特定の栄養成分を多く摂取している。それらの栄養成分の内、10種以上の推奨量を満たす食事を朝食あるいは昼食に食べることで、午後の眠気が抑えられ、仕事の達成度が高くなる。労働生産性の維持が期待できる。
- キーワード : 食後の眠気、労働生産性、栄養成分、健康経営、ヒト介入試験
- 担当 : 食品研究部門・食品健康機能研究領域・ヘルスケア食グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
心身に不調を抱えたまま出勤し、パフォーマンスが低下した状態で労働に従事している「プレゼンティーズム※」は、世界中で大きな社会問題となっている。日本では、多くの労働者が慢性的なストレス、睡眠不足、栄養バランスの乱れにさらされている上、体調が悪くても出勤すべきとの労働文化があることから、より深刻な状態にある。栄養バランスを改善することにより、ある程度の改善が可能と考えている。
そこで、本研究では観察研究における仕事の日の達成度の自己評価が高い人と低い人との間での栄養成分の摂取量差から労働生産性に影響を与える可能性の高い栄養成分を特定し、特定された栄養成分と摂取量に基づいて設計した弁当を健常成人就労男女に食べさせて食後の労働生産性維持効果を検証する。
成果の内容・特徴
- 健常な成人男女1564名を対象とした栄養調査データを解析することで、仕事の日の達成度の自己評価が高い男性は、低い男性に比べて、表1に示す13種の栄養成分を有意に多く摂取していることが明らかとなる。また、仕事の日の達成度の自己評価が高い女性は、低い女性に比べて、表1に示す15種の栄養成分を有意に多く摂取していることが明らかとなる。これらの栄養成分の内、男女に共通する栄養成分は9種である。摂取量差からそれぞれの栄養成分の1日推奨摂取量を設定することができる。
- 健常な成人男性の場合、上記の13成分中4成分以上を推奨摂取量以上にすることで仕事の日の達成度の自己評価が高くなる(図1)。健常な成人女性の場合、上記の15成分中10成分以上を推奨摂取量以上にすることで仕事の日の達成度の自己評価が高くなる(図1)。
- 仕事の日の達成度の自己評価と関係性が見られる栄養成分を1日推奨摂取量の3分の1量以上を含む食事を摂ることで、食後の眠気が抑えられ、仕事における達成度の自己評価が高くなる(図2、3)。この効果は60歳未満の健常成人就労男女で見られる(図2、3)。
成果の活用面・留意点
- 当該栄養成分の推奨摂取量に基づいた食事を社食として提供することで、企業の労働生産性向上につながる可能性がある。
- 当該栄養成分の推奨摂取量に基づいた食事を中高生向けにアレンジし、給食として提供することで、午後の授業中の眠気抑制につながり、学習効率向上につながる可能性がある。
- 当該栄養成分の推奨摂取量に基づいた食事は、食後であっても眠たくなってはいけない職種(運転手や当直の医師など)の支えとなる可能性がある。
- 当該栄養成分の推奨摂取量に基づいた食事のバランスを大きく変えてしまうような間食が、眠気抑制効果や労働生産性維持効果を減じてしまう懸念がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、SIP
- 研究期間 : 2019~2024年度
- 研究担当者 : 河合崇行、二見崇史、木元広実、山本万里、勝山豊代(北海道情報大)、西平順(北海道情報大)、佐藤浩二(北海道情報大)、田中勝久(株式会社フローイング)、松本孝司(NxtQOLコネクト株式会社)、島崎肇(株式会社メディカルフロント)、八木さとし(株式会社メディカルフロント)、佐瀬晃平(亀山市役所)、谷川健次(亀山市立医療センター)
- 発表論文等 : Kawai T. et al. (2024) Nutrients 16:1410