穀物由来の「免疫老化抑制機能」関与成分を成分固有の蛍光情報から迅速に同定

要約

自然免疫に関わる腸管内IgA抗体量は加齢に伴い減退するが、小麦ブラン成分は抗体量の維持に有効である。この作用機序が抗体輸送受容体と抗体産生、両方の増強であることを確認し、またS-EEM(Sequential Exitation-Emission Matrix)法により関与成分の同定を行う。

  • キーワード : 小麦ブラン、T細胞非依存的IgA抗体、pIgR、BAFF、S-EEM(Sequential Exitation-Emission Matrix)
  • 担当 : 食品研究部門・食品健康機能研究領域・健康・感覚機能グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

超高齢社会である我が国では、老化研究への社会的ニーズがいっそう高まっている。感染症による死亡者の多くは60歳以上の高齢者であるが、その要因として、老化に伴う免疫機能の低下「免疫老化」により、感染症に感染しやすく、かつ重症化しやすくなっていることが想定される。
コロナ禍を経た今般、食品の免疫修飾機能を謳う機能性表示が認められるなど、免疫機能の維持が注目される中、小麦ブランの摂食が老化に伴う各種生理機能の衰えを抑制することが観察研究などから示唆されている。そこで、小麦ブランの免疫老化抑制機能の評価および作用機序を明らかにするとともに、農研機構独自技術であるS-EEM法を活用してその関与成分を迅速に同定する。

成果の内容・特徴

  • 穀物由来素材である小麦ブランは、加齢に伴い減退する腸管内分泌型IgA抗体(secretory immunoglobulin A: sIgA)の量を維持する効果を有する。その作用機序が、IgAを腸管管腔内に輸送する分子であるpIgR(Polymeric immunoglobulin receptor)の腸管上皮細胞における産生亢進、およびB細胞のIgA抗体産生を促進するサイトカイン(BAFF: B cell activating factor belonging to the tumor necrosis factor family)のマクロファージにおける産生増強の2つであることを細胞試験により証明する(図1)。
  • 農研機構特許 第7207702号「成分抽出方法、蛍光指紋測定装置、及びコンピュータが実行可能なプログラム」(S-EEM法)に従い、溶出力の異なる3種類の溶媒によって小麦ブランから段階抽出法により得られた、親油性~親水性の11画分それぞれのEEMデータを取得し、細胞試験結果と合わせて多変量解析を行い、前項に示した2つの作用機序に関与する成分をそれぞれ探索する。
  • 小麦ブランの親水性抽出画分(Fr.9、10、11)は、腸管上皮様細胞(HT-29)におけるpIgR産生量を亢進する(データ略)。また親油性画分(Fr.1、2:図2)はマクロファージ様株細胞(J774A.1)において、B細胞のIgA産生を促進するサイトカインであるBAFFの産生を増強する。S-EEM法によりBAFF産生増強関与成分の蛍光情報(励起265nm/蛍光280nm)が得られたことから、HPLC分析による関与成分の探索が迅速化され、アルキルレゾルシノール類(アルキル基の炭素鎖長15~25:AR15~AR25と表記)と同定される(図3、4)。

成果の活用面・留意点

  • 小麦ブラン素材の摂取は、加齢に伴い減退する自然免疫にかかわる腸管IgA抗体量を維持し、免疫老化を抑制できる可能性がある。
  • IgA抗体量の維持に必要な小麦ブランのヒトの一日摂取目安量の決定には、さらなる検討を要する。
  • S-EEM法は、試料中の成分をその固有の蛍光情報(励起/蛍光波長)により網羅的に示すEEMデータと、健康機能性などの品質指標の測定値から、多変量解析により品質と相関する成分の蛍光情報を導くことができる。得られた蛍光情報を利用し、関与成分の特定を加速化しうる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、民間資金等(資金提供型共同研究)
  • 研究期間 : 2022~2024年度
  • 研究担当者 : 石川祐子、後藤真生、若木学、石川千秋、菊池洋介(日清製粉グループ本社基礎研究所)、豊田一希(日清製粉グループ本社基礎研究所)、西辻泰之(日清製粉グループ本社基礎研究所)
  • 発表論文等 : 石川ら、特願(2025年2月13日)