マイクロチャネルホモジナイザーを用いた均質なエマルションの高効率作製

要約

マイクロチャネルホモジナイザーは、一回の処理で均質な食品エマルションの高効率作製が可能な乳化装置である。本装置の使用により、高品質な食品エマルションの少量多品目生産への応用が期待される。

  • キーワード : 食品エマルション、マイクロチャネルホモジナイザー、乳化、生産性向上、安定作製
  • 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・食品加工グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

食品エマルションとは、水と油のように本来混ざらない素材を均質に分散させた系である。食品エマルションのサイズ分布を制御することで、液滴のクリーミングや沈降、合一による不安定化が抑制され、乳化食品の相分離および酸化等の物理・化学的安定性の向上が期待される。また、呈味・食感の制御による高付加価値化にも貢献することが考えられる。しかし、従来の乳化技術では、サイズ分布が制御されたエマルションの高効率作製は困難である。我々は、一回の乳化処理でサイズ分布が適度に制御されたエマルションを作製可能なマイクロチャネルホモジナイザー(MCH)を開発している。本研究では、MCHの液滴生産性を明らかにし、エマルションの微細化特性を評価する。

成果の内容・特徴

  • MCHは、撹拌翼付き供給容器、乳化モジュール、回収容器によって構成される(図1)。MCHを用いた水中油滴型(O/W)エマルションの作製において、供給容器に導入した粗エマルション中の粗大液滴が急速に浮上することが課題である。そこで、供給容器に粗エマルションを攪拌可能な機構を追加し、気密性が保持された状態で攪拌翼を回転させる。これにより、試料中の粗大液滴が浮上することなく、均質に分散しながら乳化モジュールに到達可能になる。
  • 乳化モジュール内部には、非対称貫通型マイクロチャネル(MC)基板が装着されている(図2)。MC基板には、入り口側と出口側で形状が異なる貫通孔(直径10 µm)が密に配置されており、粗大液滴がMC内を通過する際に、液滴が伸長・分裂する。これにより、一度の乳化処理で均質なエマルションが作製される。
  • 当研究グループが開発したMC乳化法は、分散相(油)をMC基板内の微細流路を通じて連続相に送り出すことで単分散エマルションを作製可能であるが、生産性が低いことが課題である。MCHは、予め緩く撹拌した粗エマルションをMC基板に圧入するプレミックス乳化技術を採用している。これにより、MC内を通過する際の抵抗力が下がるため、液滴生産性が向上する。
  • MCHを用いて、O/Wエマルションの液滴径分布を評価すると、作製されたエマルションは一定圧力以下の条件において、サイズ分布が適度に制御されたエマルションが作製される(図3)。圧力を増加させると、ある圧力を境に液滴径が増大する閾値(臨界圧力)が存在する。臨界圧力の値は、分散相の種類によって異なる。
  • 連続相として乳化剤溶液を使用し、分散相として中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT;Medium Chain Triglyceride)油を使用した場合は、MCHの液滴生産性は最大で3000L/(m2h)である(図4)。これにより、これまでに当部門で開発されたMC乳化と比較し、30倍以上の液滴生産性を達成する。

成果の活用面・留意点

  • 均質なエマルションを高効率かつ安定して作製するための基本条件が明らかになり、今後、高品質な乳化食品の少量多品目生産に活用可能になると期待される。
  • 操作圧力を上げることで、液滴生産性は向上するが、臨界圧力以上の場合、液滴の微細化ができず、サイズ分布の制御が困難になる点に留意が必要である。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2020~2024年度
  • 研究担当者 : 梅田拓洋、小林功
  • 発表論文等 : Umeda T. and Kobayashi I. (2024) Int. Food Res. J. 31:1392-1401