要約
高圧処理した大腸菌の平板培養検出において、増殖に至適な35°C培養では48時間で検出できるが、検出菌数が低い問題がある。一方、25°C培養では検出菌数が最大となるが、検出に要する時間が長い問題がある。そこで、25°C培養と35°C培養とを組み合わせ、検出効率を改善する。
- キーワード : 食品高圧加工、損傷菌、大腸菌、検出
- 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・食品加工グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
食品加工において、高圧処理による殺菌技術が用いられているが、損傷菌の視点からは未解明な点が多い。「ケガをしつつも生きている」損傷菌は、加熱処理を始め、高圧処理を含む様々な殺菌工程で発生し得るが、環境条件が整うと、回復して健常菌となり増殖するため、食中毒菌・変敗菌で問題となることがある。それ故、健常菌よりも増殖が遅く検出に時間を要する損傷菌を見逃さないようにするため、検出効率の改良が望まれている。
不十分な条件で大腸菌を含む食品を高圧処理すると、損傷菌を含めた大腸菌が生残することがある。高圧処理した大腸菌は、至適培養温度近傍で培養すると、比較的短い時間で検出できる。一方で、至適培養温度よりも低い温度で培養すると、検出菌数が高くなる傾向があるものの、温度が低いために増殖が遅く、長い培養時間が必要というジレンマがある。
そこで本研究では、高圧処理した大腸菌を20、25、30、35、37、40°Cの各温度で培養し、検出菌数が最大となる温度を解明する。さらに、検出菌数が最大となる温度での培養と、培養時間が短くて済む培養温度とを組み合わせることにより、検出菌数が最大で、なおかつ培養時間が最小となる検出培養条件を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 大腸菌(ATCC25922株;処理前菌数10.32±0.23log CFU/ml)を高圧処理(400、500、600MPa;25°C;10分間)すると、その後の培養温度によって検出菌数に差が出る(図1)。25°Cよりも高温で培養すると、検出菌数が低くなり、殺菌効果を高く見積もってしまう。
- いずれの高圧処理条件においても、25°C培養での検出菌数が最大(5-6log CFU/ml)であり、40°C培養よりも2~3桁高く検出される。しかし、25°C培養では、コロニー形成が遅いため、検出菌数が定常となる迄に72時間(3日間)を要する問題がある(図1)。
- 一方、大腸菌の至適培養温度近傍の35°C培養では、コロニー形成が早い分、検出時間は48時間(2日間)と短いが、検出菌数が25°C培養よりも、約1桁少なく見積もられる問題がある(図1)。これは、損傷菌が一部死滅するためと推察される。
- 検出菌数及び検出に要する時間の最適化に向けて、25°C培養と35°C培養とを培養時間を変えて組み合わせた各試験区(図2)で培養して得られた検出菌数を、25°Cでの3日間培養による最大検出菌数と有意差検定(5%)すると、25°Cで6~8時間培養してから35°C培養することで(培養試験区4及び5)、24時間(1日間)でも最大検出菌数の検出が可能である(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本知見は、不十分な高圧殺菌後に生残する細菌の平板培養検出に向けて、条件最適化の方向性を示すものである。高圧殺菌後の損傷菌を見逃さない検査に向けて、検出法の改善に活用できる。
- 本知見の適用は高圧損傷した大腸菌に限られるため、他の食中毒菌等を対象として、適用妥当性を検証する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2015~2023年度
- 研究担当者 : 中浦嘉子、Claudia SOK(ミュンヘン工大)、森松和也(愛媛大)、山本和貴
- 発表論文等 : Nakaura Y. et al. (2024) High Pressure Res. 44:105-115