稲わらの分解力に優れた好熱性放線菌を高度利用するためのゲノム編集手法

要約

好熱性放線菌K5株のゲノム上で標的部位の塩基配列を改変し、改変後に脱落するプラスミドを設計することで、本菌のゲノム編集手法を開発する。この手法により、稲わらの分解力に優れた好熱性放線菌を効率的に改良し、代謝機能解明や高度利用技術開発の加速に繋げられる。

  • キーワード : 好熱性放線菌、稲わら分解、ゲノム編集
  • 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・バイオ素材開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

農業残渣としての稲わら等の茎葉バイオマスを迅速に分解する好熱性放線菌が注目されている。その一方で、好熱性放線菌の機能を効率的に調べる手段が現状では少ないため、稲わらの主成分であるセルロースの分解・代謝機構は十分に解明されていない。そこで本研究では、堆肥中から見出し、50°Cでの稲わら分解力に優れた好熱性放線菌K5株を用いて、ゲノム編集手法を開発する。本菌のゲノム上の標的塩基配列を改変する技術を開発することで、セルロースの分解・代謝機能をはじめとする本菌の機能解明、産業利用に向けた知見集積を加速する。

成果の内容・特徴

  • 2019年に稲わら、野菜残渣等が堆積した堆肥から単離した好熱性放線菌K5株は、消石灰前処理を行った稲わら粉末を唯一の炭素源とした液体培養において、50°C、4日間でセルロースを主体とするβ-グルカンの70.3%、キシランの79.6%を分解する高い稲わら分解力を示す(図1)。
  • K5株のゲノム編集は図2に示すプラスミド(pGEK5)を用いて行う。標的遺伝子と相同の20塩基配列(ガイド配列)をpGEK5の部位②に挿入後、大腸菌から接合法を用いてK5株に導入することにより、抗生物質アプラマイシンへの耐性を与えるとともに、部位①の酵素(シトシンデアミナーゼ-Cas9ニッカーゼ(nCas9)融合タンパク質)により標的遺伝子のシトシンをチミンに置換する。
  • 塩基置換が行われたK5株のプラスミド(pGEK5)は非選択培地上で胞子を形成させることにより脱落する。これにより、再度pGEK5の導入が可能になり複数の塩基置換を繰り返し導入することが可能になる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • K5株へのプラスミド導入から、目的とする塩基置換の確認、導入プラスミドの除去までの一連の操作はおよそ3-4週間で完了する。ただし、ガイド配列の設計によっては塩基置換が行われない可能性があるため、確実に目的の塩基置換が行われたゲノム編集株を得るためには複数のガイド配列を設計、導入することが望ましい。
  • 本手法を用いれば、導入したプラスミド(外来遺伝子)は最終的に除去され、また塩基置換時に外来の鋳型遺伝子を用いることはない。
  • 本手法を用いることで、外来遺伝子を残存させずにセルロース分解力を強化した菌株、有用物質を蓄積する菌株等を作製することが可能となり、稲わら等低利用資源の活用、農業残渣の堆肥化促進等へ道を拓くものと期待される。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2020~2024年度
  • 研究担当者 : 山岸賢治、池正和、徳安健
  • 発表論文等 : Yamagishi K. et al. (2024) Biosci. Biotechnol. Biochem.
    doi:10.1093/bbb/zbae157