要約
イチゴの輸出量増大とCO2排出量低減の両立に必要なプレ・ポストハーベスト技術開発の方向性を検討すると、春のイチゴの流通耐性を品種選抜や育種で高め、優れた低温保持技術や包装容器の活用によりロスを低減しつつ、長期間の海上輸送を成功させる技術開発が有効と示唆される。
- キーワード : ライフサイクルアセスメント、イチゴ、流通、プレハーベスト、ポストハーベスト
- 担当 : 食品研究部門・食品流通・安全研究領域・流通技術・新用途開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
日本のイチゴは高い価格で流通・取引され、主要な輸出先は香港、台湾、タイ、シンガポール、マレーシア等である。ロスが生じやすいイチゴの更なる輸出量増大のためには、輸出を前提としたプレ・ポストハーベスト技術の検討が必要と考えられる。一方で、Sustainable Development Goalsに挙げられるように、事業活動による環境負荷量を適切に低減することも重要である。しかし、ライフサイクルアセスメントの結果を基とし、今後、日本のイチゴの輸出量増大と環境負荷量低減を両立するためには、どのような課題の解決に着目した技術開発をしていくべきかを検討した事例はない。
本研究では、機能単位を輸出先での店舗陳列後までロスにならなかったイチゴ1kgとした上で、輸出によるCO2排出量に大きく影響を与えると想定した、輸出方法、ロス率、栽培時期の3つを変数としたライフサイクルアセスメントを行う。その結果から、各変数の環境負荷への影響の大きさを概算し、どういった課題に着目したプレ・ポストハーベスト技術開発が有効かをスクリーニングする。
成果の内容・特徴
- 輸出方法の違いによるCO2排出量の変動としては、使用する流通温度や包装容器の違いと比較して、輸送方法を航空輸送から海上輸送に変更した際の影響が大きい(図1)。
- ロス率の増大により輸出時のCO2排出量は指数関数的に増大する(図2)。
- 暖房用の重油消費量の違いに基づき、冬のイチゴより春のイチゴの方が輸出時のCO2排出量が低い傾向がある(図2)。
- 総合的に考えると、イチゴの輸出量増大とCO2排出量低減の両立には、春イチゴを対象とした、長期間の海上輸送を安定的に可能とする技術開発および販売チャネルの開拓が有効と示唆される。具体的には、ロスが生じやすい春イチゴの流通耐性を品種選抜や育種で高め、優れた低温保持技術や包装容器の開発および活用を適切に行うなどである。
成果の活用面・留意点
- 国産青果物の輸出事業における輸出量増大と環境負荷量低減を両立する。
- 本成果の分析は主にバックグラウンドデータによる相対的な比較であるため、具体的な製品比較や数値目標を設定するには、フォアグラウンドデータの実計測が不可欠である。
- 春のイチゴはロスが生じやすい傾向があるため、春先まで果皮および果肉がやわらかくならない品種の選抜・育種や、効果の高い低温流通や包装容器の開発や活用が必須である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(スマート農業技術の開発・実証プロジェクト)
- 研究期間 : 2021~2024年度
- 研究担当者 : 渡邊高志、日高功太、田口善勝、中村宣貴、佐々木勇麻、曽根一純
- 発表論文等 : 渡邊ら(2024)農業食料工学会誌 、86:412-419