予冷遅れの制御によるモモ輸出時の損傷低減手法

要約

モモ果実について、収穫から予冷開始までの時間(予冷遅れ)を適切に制御することにより、輸出後の損傷を低減する手法である。必要な設備は低温貯蔵庫のみであり、簡便かつ現実的なロス削減技術として有効である。

  • キーワード : モモ、損傷、予冷、輸出、ロス削減
  • 担当 : 食品研究部門・食品流通・安全研究領域・流通技術・新用途開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

モモは物理的刺激により容易に損傷に至るため、輸出時の損傷低減技術の開発が求められている。また、モモは追熟性果実であるため熟度毎に損傷しやすさは異なるが、その定量化は行われていない。そこで、本研究では、モモの果実かたさ変化を予測する手法を構築するととともに、果実かたさが損傷特性に及ぼす影響の定量化を試みる。さらに、予冷遅れが輸出後の損傷程度におよぼす影響を評価し、現場で導入しやすいモモ果実の損傷低減手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 山梨県産のモモの早生品種である「加納岩白桃」の0-35°Cの貯蔵温度範囲における果実かたさの変化は、積算呼吸量を用いて説明することが可能である(図1)。
  • 4段階の果実かたさの範囲に分けたモモの異なる振動強度での振動損傷特性は、加速度と損傷に至るまでの回数との関係であるS-N曲線を用いて説明可能である(図2)。また、落下損傷特性についても同様な関係式で説明可能である(データ省略)。これらの結果から、低温流通によりモモの軟化を抑制することが輸出時の損傷低減に有効であることは明らかである。
  • 収穫から予冷開始までの時間を予冷遅れと定義し、予冷遅れが輸出後の果実かたさと損傷に及ぼす影響をシンガポールへの船便輸出試験で検証する(ここでは山梨県産の早生品種「白鳳」を使用)と、予冷遅れ6時間では輸出後の果実かたさが保持され、損傷が低減できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果で提案する損傷低減手法に必要なのは温度管理(およびその時間管理)のみであり、特別な梱包容器等は必要としない。そのため、流通現場での導入が容易である。
  • モモは5°C程度の貯蔵により低温障害が生じる。そのため、船便輸出において果実かたさを維持するための低温としては0°C程度が適温である。
  • モモの品種により軟化特性は異なる。損傷抑制が可能な予冷遅れ時間の設定は品種ごとに行う必要がある。
  • 本研究は輸出時の損傷低減対策として実施したが、国内におけるモモ流通時の損傷低減にも応用可能である。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(地域戦略プロジェクト)、文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2017~2021年度、2023~2024年度
  • 研究担当者 : 中村宣貴、渡邊高志、佐々木勇麻、兼田朋子(宮城大)、安永円理子(東京大)、手塚誉裕(山梨県果樹試)、永田雅靖(岐阜大)、椎名武夫(千葉大)
  • 発表論文等 :
    • 中村ら(2021)日食保、47:11-18
    • 中村ら(2021)日食保、47:131-137
    • 中村ら(2022)日食保、48:21-26
    • 中村ら(2024)日食保、50:117-123