小規模低酸素庫による貯穀害虫の殺虫

要約

小規模低酸素庫を窒素置換により酸素濃度0.1%とし、処理温度30°Cを満たした条件で4日連続処理をすることで、コクゾウムシとタバコシバンムシの成虫と卵は完全に殺虫可能であり、大規模施設の殺虫処理に適用できる。

  • キーワード : 小規模低酸素庫、窒素ガス、薄荷、玄米、死亡率
  • 担当 : 食品研究部門・食品流通・安全研究領域・食品安全・信頼グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

植物検疫の大規模殺虫には臭化メチルやリン化アルミニウム剤等によるくん蒸処理が行われているが、地球環境破壊、薬剤抵抗性の出現、人間への安全性の問題があり、従来とは異なる殺虫技術の開発が求められている。
そこで、本研究では窒素置換を用いた低酸素殺虫を大規模施設で実現する前段階として、小規模低酸素庫を製作設置する。この小規模低酸素庫によって、3L容器を用いた試験で明らかにした完全殺虫の条件である酸素濃度0.1%、温度30°C、4日連続処理(宮ノ下ら、2023)を適用し、薄荷と玄米を処理対象物にして貯穀害虫(コクゾウムシ、タバコシバンムシ)の成虫と卵の死亡率を確認する。供試虫としたコクゾウムシの卵は産卵された玄米、タバコシバンムシの卵は小麦全粒粉の中に混合したものを、通気性のある容器に入れ、処理対象物の中心部に埋めて低酸素処理を行う。

成果の内容・特徴

  • 小規模低酸素庫は、大きさ1.8m×1.8m×高さ2.2m(約7m3)で、ガスボンベから窒素ガスを庫内に充填し、ヒーターで庫内の温度を上げることができる(図1)。
  • 処理対象物の温度は、かさ密度が小さい(空隙が多い)薄荷では上昇しやすく、かさ密度の大きい玄米では上昇しにくく、処理対象物の形状によって完全殺虫に必要な時間が異なる。
  • かさ密度が小さい薄荷15kgを用いた試験では、酸素濃度が0.1%、処理温度が30°Cに到達するまで1日を要し、続いて4日間の連続処理により、合計5日間の処理で対象害虫の完全殺虫が可能である(表1)。
  • かさ密度が大きい玄米240kgを用いた試験では、酸素濃度が0.1%に到達するまで1日、処理温度が30°Cに到達するまで4日を要し、続いて4日間の連続処理により、合計8日間の処理で対象害虫の完全殺虫が可能である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 酸素濃度0.1%、温度30 °C、4日連続処理の条件は、低酸素耐性が強いタバコシバンムシの卵を完全に殺虫可能なことから、他の多くの害虫に対しても高い殺虫効果を期待できる。
  • 本低酸素殺虫条件を用いた大規模な殺虫処理を実施するためには、酸素濃度0.1%を保持する密封性の高い施設が必要である。
  • 本低酸素殺虫技術は、従来のくん蒸薬剤による殺虫技術と同等の処理期間で、穀物や乾燥食品の大規模殺虫を実施できる。
  • かさ密度の大きい処理対象物は、かさ密度の小さいものに比べると温度30 °Cに到達するまで時間がかかり、殺虫処理期間が長くなる傾向がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、民間資金等(資金提供型共同研究)
  • 研究期間 : 2022~2023年度
  • 研究担当者 : 宮ノ下明大、北澤裕明、萩田美乃里((株)ツムラ)、土方野分((株)ツムラ)
  • 発表論文等 :
    • 宮ノ下ら(2022)都市有害生物管理、12:25-31
    • 宮ノ下ら(2023)都市有害生物管理、13:53-61
    • 宮ノ下ら(2024)都市有害生物管理、14:41-50