要約
農研機構が保有する6,000株超の乳酸菌コレクションについて菌株情報・ゲノム情報・特性情報を格納したデータベース、およびそのオンライン検索を可能としたWebシステムである。ユーザーが関心のある菌株を効率的に選抜することができ、乳酸菌の産業利用のための研究開発に寄与する。
- キーワード : 乳酸菌、データベース、発酵食品、機能性、ゲノム
- 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・バイオ素材開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
乳酸菌は発酵産業や機能性食品分野で重要であることから、様々な試料や環境から菌株の収集が行われている。近年では乳酸菌の利用が拡大する一方で、コレクションされた多数の菌株の特性把握や情報管理には課題があり、微生物資源をより簡単に活用できるシステムが求められる。農研機構(略称 : NARO)でも1995年以降、食品研究部門および畜産研究部門の前身組織である3つの研究拠点において、全国から収集した乳酸菌を保有する。そこで本研究では、各拠点で個別利用されてきた菌株を「NARO乳酸菌コレクション」として統合することを目的とする。さらに、食品分野での研究開発への簡便・効率的活用を促進するため、菌株の各種データを集約した「NARO乳酸菌データベース」およびそのWeb検索システムを開発する。
成果の内容・特徴
- NARO乳酸菌コレクションは、発酵食品、青果物、畜産飼料、動植物など幅広い環境から収集された6,000株を超える乳酸菌株で構成される、公的機関としては最大規模の微生物資源である。コレクションのほぼ全菌株に分離源の記録があり、多種多様な食品を由来とする菌株が約半数を占める(図1)。コレクションの約96%に生物種の解析データがあり、3目8科31属196種の乳酸菌および関連の微生物が含まれる。
- NARO乳酸菌データベースは、コレクションの菌株に関係する計20万件を超える各種情報を格納している。主に、分離源や生物種などの"菌株情報"、予測した遺伝子・タンパク質機能を含む"ゲノム情報"、糖資化性などの"生理生化学的特性"、牛乳・豆乳発酵能や代謝産物などの"発酵特性"、免疫調節活性などの指標を含む"機能性"で構成される。乳酸菌の特性は菌種だけでなく菌株レベルで異なるため、豊富なデータ基盤は菌株の選抜指標として有用である。
- 本データベースのWeb検索システムは、各種の格納データに対して条件検索やキーワード検索の機能をオンラインで提供する(図2、表1、https://lacticbacteria.nfri.naro.go.jp/)。検索の実行および分離源・生物種は無制限で閲覧可能であるが、菌株番号および各種特性情報は登録ユーザーに限定での公開としており、保有菌株の新規性が保持されている。本システムのユーザーは、乳酸菌株の選抜に要する多大な人員・時間・経済的コストの削減が可能となる。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 発酵食品製造事業者、ヘルスケア食品製造事業者、種菌製造・乳酸菌培養事業者、公設試験研究機関、大学。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 国内外。
- その他 : Web検索システムのユーザー登録については、トップページ「お問い合わせ」に記載の代表連絡先(
)への申し込みを受けて、秘密保持契約の締結後にユーザーアカウントを発行。菌株の分譲等については、利用形態を個別に協議したうえで研究試料提供契約や共同研究契約を締結し行う。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、BRIDGE
- 研究期間 : 2019~2025年度
- 研究担当者 : 木村啓太郎、鈴木チセ、小林暁雄、野村将、小林美穂、萩達朗、林田空、守谷直子、青木玲二、大池秀明、小林寿美、遠野雅徳、木元広実、望月寛子、齋藤勝一、渡辺純、冨田理、須志田浩稔、町田峻太郎
- 発表論文等 :