要約
ぜん動運動が定量的に模擬されたヒト胃消化シミュレーター(GDS, Gastric Digestion Simulator)を用いて、凍結含浸法により軟化した鶏ムネ肉の胃中での微細化を定量的に評価できる。
- キーワード : ヒト胃消化シミュレーター、ぜん動運動、凍結含浸法、硬さ、胃内消化挙動
- 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・食品加工グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
加工食品の消化性を制御するためには、食品の胃中での微細化挙動を明らかにする必要がある。特に、胃のぜん動運動による物理的な微細化現象は、食品の硬さに大いに依存する可能性がある。広島県立総合技術研究所食品工業技術センターにより開発された凍結含浸法は、食材に酵素等を急速に導入し、食材の形状を保持したまま軟らかく加工できる技術であり、鶏ムネ肉においても硬さの異なる試料を調製できる。
本研究では、定量的なぜん動運動の駆動および消化挙動の可視化が可能なヒト胃消化シミュレーター(GDS, Gastric Digestion Simulator)を用い、鶏ムネ肉の凍結含浸処理が胃内での微細化挙動に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- GDSを用いた胃消化試験に供する鶏ムネ肉は、酵素処理をしない試料(対照)、酵素Aで処理した試料および、酵素Bで処理した試料の3種類を用いる。各試料の硬さは対照>酵素B>酵素Aの順で大きい(図1)。一辺5mmの立方体にカットされた80gの各試料は、人工唾液30mLおよび人工胃液280mLと共にGDSへ投入され、180分間のGDS試験を実施する。
- 胃消化試験における試料の微細化挙動は、硬さの影響を受ける(図2)。試験中の様子を観察した範囲では、酵素AおよびBいずれも対照と比較して試料粒子の微細化の進行が速く、酵素Bでは試験開始直後における試料粒子の形状が保持されている。
- 胃の出口である幽門を通過する粒子(2mm程度以下)より小さい粒子の割合は、試料の硬さによる影響を受ける。胃消化試験後の消化物の重量分布(図3)において、試験終了時点における2.36mm以下の画分の乾燥重量割合は、酵素Aが対照と比較して顕著に多い。即ち、試料を軟化させることで微細化が促進される。
成果の活用面・留意点
- 定量的なぜん動運動を備えるGDSの利用により、鶏ムネ肉以外の食品についても、硬さ等の物理的特性の違いが胃内消化挙動に及ぼす影響を評価できる。本成果は、形状保持・消化性を考慮した食品開発に有用と期待される。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2023~2025年度
- 研究担当者 : 神津博幸、小林功、宮地夏奈(広島総研食品工技セ)、坂本みのり(広島総研食品工技セ)、下久由希(広島総研食品工技セ)、金﨑真悠(広島総研食品工技セ)、柴田賢哉(広島総研食品工技セ)
- 発表論文等 :