市場に流通する牛胎児血清の約8割から牛ウイルス性下痢ウイルスの遺伝子が検出される

要約

牛胎児血清(FBS)は、細胞培養に用いられる生物由来原料の一つであり、家畜衛生における検査に必要不可欠な試薬である。本研究では、FBSに混入する可能性がある微生物の一つである牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)について、近年の流通製造ロットへの混入状況調査結果を提供する。

  • キーワード : 牛胎児血清、牛ウイルス性下痢ウイルス、生物由来原料
  • 担当 : 動物衛生研究部門・動物感染症研究領域・ウイルスグループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

牛胎児血清(FBS)は、細胞培養に用いられる生物由来原料の一つであり、家畜衛生における検査や研究に必要不可欠な試薬である。生物由来原料は、時に原料となった生物に由来する微生物を細胞に混入させるリスク源となるため、市場に流通する製品の検査成績は国内の家畜衛生に携わる検査員にとって重要な情報である。
FBSに混入するリスクが高い微生物として、牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)が知られている。BVDVは、妊娠牛に感染することで胎児への垂直感染を引き起こすため、その胎児に由来するFBSは感染性のウイルスや抗BVDV抗体を含み、臨床現場等で実施される検査において誤診断をもたらす原因となる。
本研究では、2017年から2021年の期間に市場に流通していたFBSにおけるBVDV混入状況を調査し、国内の検査機関に情報共有することでBVDV混入リスクに関する注意喚起と啓蒙を行う。

成果の内容・特徴

  • 本研究で調査した製造ロット41検体(全て海外産地)のうち、BVDV遺伝子陽性検体は34検体(82.9%)、BVDVに対する特異的抗体を含む製造ロットは17検体(41.5%)であった(図1)。
  • BVDV特異的遺伝子及び抗体どちらも混入していないBVDVフリーの製造ロットは5検体(12.2%)のみであった。

成果の活用面・留意点

  • 近年流通している製造ロットのBVDV混入状況に関する検査成績は、将来的な購入試薬選定時の参考情報として国内の家畜衛生に携わる検査員にとって有益な情報となる。

具体的データ

図1 本研究で検査したFBS 41検体のBVDV遺伝子及び特異的抗体検出試験の結果

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2021~2022年度
  • 研究担当者 : 安藤清彦、中村南斗(秋田県)、友知久幸(沖縄県)、西森朝美、須田遊人、松浦裕一、岩丸祥史
  • 発表論文等 : 中村ら(2022)日本獣医師会雑誌、75(7):e139-e144