免疫組織化学による鶏のマレック病の新規診断法

要約

マレック病の腫瘍細胞を特異的に検出する抗Meqモノクローナル抗体を作出し、免疫組織化学による新規診断法を確立することで、鶏にリンパ腫を起こす類似疾病との鑑別精度が向上する。本法はマレック病の診断が正確・簡便に実施でき、発生状況把握に役立つ。

  • キーワード : 鶏、マレック病、Meq、診断、免疫組織化学
  • 担当 : 動物衛生研究部門・衛生管理研究領域・病理・生産病グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

マレック病は、マレック病ウイルスを原因とする届出伝染病であり、鶏にリンパ腫という腫瘍を発症させる。国内の食鳥検査では年間数万羽がマレック病と診断されて廃棄されており、養鶏産業の生産性に多大な影響を与えている。国内においてマレック病の確定診断は病理組織検査によるリンパ腫の形態学的な確認で行われている。しかし、現在行われている形態学的な評価ではマレック病ウイルス感染とリンパ腫形成との直接的な関連を証明できないため、鶏白血病などのリンパ腫を生じる類似疾病との鑑別が難しい場合がある。本研究では、マレック病の腫瘍細胞に特異的に発現するマレック病ウイルス由来がんタンパク質Marek's disease virus-EcoRI-Q(Meq)に対するマウスモノクローナル抗体を作出し、従来よりも精度の高いマレック病の診断法として有用な免疫組織化学(IHC)を確立する(図1)。

成果の内容・特徴

  • 作出した抗Meqモノクローナル抗体(1C1-121、2C5-11、3A3-112、4A5-54、5F7-82、6B5-128)を用いたIHCによりマレック病の腫瘍細胞に発現するMeqを検出することが可能となり、マレック病を正確に診断することができる(図2)。
  • ホルマリン固定パラフィン包埋標本上のMeqを検出するためのIHCの抗原賦活化法として、加熱処理が有効である。
  • 作出した抗Meqモノクローナル抗体は、IHCにおいて鶏の正常組織とは反応しない(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 国内の家畜保健衛生所や食鳥検査所、獣医系大学等におけるマレック病の正確かつ簡便な診断および発生状況の把握が可能となる。
  • 野外の鶏のリンパ腫材料を多数収集、解析し、開発したIHCの実用性を評価する必要がある。

具体的データ

図1 マレック病の新規診断法のイメージ,図2 マレック病ウイルス感染鶏および非感染鶏の肺の組織写真

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2019~2022年度
  • 研究担当者 : 黒川葵、山本佑
  • 発表論文等 :
    • Kurokawa A. and Yamamoto Y. (2022) J. Vet. Diagn. Invest. 34:458-464
    • 黒川、山本「マレック病ウイルスMeqタンパク質に対する抗体」特開2022-187970(2022年12月20日)