大果で日持ち良好なやや早生のカキ新品種「つきまる」

要約

「つきまる」は、10月下旬に収穫可能なやや早生の完全甘ガキである。大果で食味良好であり、果頂裂果の発生が少ない。日持ちが良好であり、国内流通における棚持ち性の改善や輸出向け果実としての活用が期待できる。

  • キーワード : カキ新品種、やや早生、大果、良食味、良日持ち
  • 担当 : 果樹茶業研究部・果樹品種育成研究領域・落葉果樹品種育成グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

現在栽培されている完全甘ガキをみると、主要品種は晩生の「富有」および「次郎」と、それら の中生の枝変わり品種や「太秋」等中晩生に偏っている。一方早生については、大果で品質良好な品種が少なく、品種育成への要望が強い。また、国内の流通場面はもとより、今後のカキ果実の輸出拡大を図る上では、より日持ちの良い品種が求められる。そこで、早生で大果の、食味と日持ちが良い品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 2003年に大果で中生の渋ガキ品種「太月」に品質良好な早生の「甘秋」を交雑して得られた実生から選抜され、2015年から2021年まで系統番号「安芸津26号」としてカキ第8回系統適応性検定試験に供試した結果、新品種候補として決定された後、2022年6月17日に品種登録出願、9月29日に公表された品種である。
  • 樹勢は「松本早生富有」並みで樹姿は開張と直立の"中間"である(表1)。展葉期および開花期はいずれも「松本早生富有」や「富有」と同時期である。雌花の着生は"多"で、雄花の着生はみられない。年により早期落果と後期落果が生じることがある。果実の収穫期は10月下旬のやや早生で、「松本早生富有」より1週間程度、「富有」より3週間程度早い。
  • 果実は円形で 414g と大きい(表2、図1)。果皮色はカラーチャート(CC)値 4.8 で「松本早生富有」や「富有」ほど赤味は帯びない。糖度は 16~17%程度で「富有」並みである。適熟果の肉質は"密"、果肉硬度が低く、果汁も"多"で、食味良好である。果頂裂果はほとんどないが、 へたすきが生じやすい。破線と条紋を主因とする汚損果の発生率は「松本早生富有」や「富有」 より高いが、程度は軽微である。常温での日持ち日数は36日で、「富有」より8日、「松本早生富有」より11日長い。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : カキ生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 甘ガキ栽培が可能な地域。今後果実の輸出拡大を検討している産地。
  • その他 : 苗木販売は供給体制が整い次第、提供開始する予定である。破線と条紋を主とした汚損が発生しやすいが、黒変はしにくく外観を大きく損なうことは少ない。低日照時間、高湿度や果面の結露が汚損果の発生を助長するので、対策として密植を避ける等園内の通風や採光を図る。着色ムラが生じる果実が見られ、その軽減策として、果実の日照環境改善のための摘葉等が望まれる。落果の発生対策として、摘蕾の励行等が望まれる。

具体的データ

表1 「つきまる」の育成地(広島県東広島市安芸津町)における栽培特性(2017-2021),表2 「つきまる」の育成地(広島県東広島市安芸津町)における果実特性(2017-2021),図1 「つきまる」の果実

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2003~2021年度
  • 研究担当者 : 齋藤寿広、佐藤明彦、河野淳、尾上典之、三谷宣仁、山田昌彦、伴雄介、東暁史、上野俊人、白石美樹夫、松﨑隆介、清水健雄、伊藤隆男
  • 発表論文等 : 齋藤ら「つきまる」品種登録出願公表第36319号(2022年9月29日)