ジベレリンペーストを用いた接木当年生リンゴ苗の新梢伸長の促進法

要約

ジベレリンを2.7 %含有するジベレリンペースト100 mgを5月中下旬から3週間程の間隔で新梢先端付近に計5回塗布することで、カラムナー性の有無を問わず、接木当年生のリンゴ苗の新梢伸長を促進できる。

  • キーワード : カラムナー性、育苗、大苗、成長促進、植物生育調節剤
  • 担当 : 果樹茶業研究部門・果樹生産研究領域・果樹スマート生産グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

ジベレリンペーストは2.7 %のジベレリンを含有する植物生育調節剤であり、ニホンナシやモモ等の苗の新梢伸長促進に使用できるが、リンゴでは利用可能な薬剤として登録されていない。近年、リンゴでもジョイント栽培のような大苗を用いる栽培方法が開発された。また、自然と円筒状の樹形となるカラムナー性のリンゴで良食味系統が選抜され、省力栽培へと活用すべく、普及の機運が高まっているが、カラムナー性のリンゴには苗の生育が遅いという欠点がある。本研究では、リンゴにおけるジベレリンペーストの適用拡大を進め、育苗時の新梢伸長を促進させる技術を開発するため、接木当年生苗にペーストを塗布した際の新梢伸長の促進効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ジベレリンペースト100 mgを5月中下旬から3週間程の間隔で新梢先端付近(頂芽の数cm直下、図1)に計5回塗布することで、カラムナー性の有無と関係なく新梢伸長を促進できる(図2、3)。
  • カラムナー性のリンゴであれば、新梢伸長促進は3回塗布でも認められるが、非カラムナー性のリンゴでは3回程度の塗布では新梢伸長が促進できない場合が多い(図2、一部データ省略)
  • 5回塗布により多くの品種で副梢数も増加するため(表1)、品種によってはフェザー苗の育成に利用できる可能性がある。
  • ジベレリンペーストを頂芽から大きく離れた位置に塗布しても新梢伸長は促進されない(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • 使用したジベレリンペースト剤(ジベレリン2.7 %含有)はリンゴでの農薬登録がないが、現在、登録に向けて効果の確認試験が行われている。
  • 塗布部付近の葉にやけ症状がみられる場合があるが、新梢がよく伸長していれば、問題はない。
  • 苗の樹勢が不十分だと伸長促進効果がみられず新梢の先端が枯死することがある。

具体的データ

図1 ジベレリンペーストの塗布部位,図2 ジベレリンペーストを塗布した接木当年生苗の新梢長の推移,表1 ジベレリンペーストを塗布した接木当年生苗の副梢数,図3 伸長停止直後の盛岡74号の樹姿

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2018~2021年度
  • 研究担当者 : 馬場隆士、岡田和馬、守谷友紀、阪本大輔、花田俊男、岩波 宏
  • 発表論文等 : 馬場ら(2022)園学研、21:149-156.