カラムナータイプのリンゴ盛岡74号のV字栽培方式に適した幼木期管理方法

要約

盛岡74号/JM2のV字栽培方式において、6本主枝仕立てで定植1、2年目に主枝の新梢先端付近にジベレリンペーストを塗布すると新梢伸長が促進され、定植3年目の開花期の花芽着生数が増加するとともに、定植3年目の秋には樹形が完成する。

  • キーワード : ジベレリンペースト、主枝数、新梢伸長、花芽着生
  • 担当 : 果樹茶業研究部門・果樹生産研究領域・果樹スマート生産グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

果樹生産現場において労働生産性の向上が求められており、省力樹形によるリンゴ栽培が今後増えていくと考えられる中で、省力的で機械化に適した樹姿を持つカラムナータイプも選択肢として挙げられる。カラムナータイプは新梢伸長量が少なく、苗木を定植してから樹形が完成するまでに時間がかかるという問題があるが、生育期間中にジベレリンペーストを塗布することで新梢伸長を促進できることが明らかになっている。また、カラムナータイプは隔年結果しやすく、樹当たりの着果量が限られるため、密植により単位面積当たりの収量増加を期待したいが、高密植栽培では大量の苗木が必要となるという問題もある。この問題に対し、リンゴでは複数の主枝を斜立させることにより、裁植本数を減らしながら、単位面積当たりの収量増加を目指すV字栽培方式の事例が多くある。
そこで、本研究では、複数主枝を斜立させた仕立てによる盛岡74号/JM2のV字栽培方式に適した幼木期の管理方法を検討する。樹高3.5 m、主枝長3.0 mを目標とするV字栽培方式(図1)において、ジベレリンペースト塗布や主枝数が生育や花芽着生に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 定植1、2年目のジベレリンペースト塗布により、主枝先端の新梢伸長が促進される。ジベレリンペーストを塗布した場合の定植1年目の主枝先端の新梢伸長量は塗布しない場合の2倍程度に増加し、定植2年目の秋における主枝長も約2倍に増加する(表1)。
  • 定植1、2年目にジベレリンペーストを塗布した場合、主枝数が少ないほど定植1年目の主枝先端の新梢伸長量が多い(表1)。6本主枝仕立ては2本主枝仕立てや4本主枝仕立てに比べて同一樹内の主枝の伸長にばらつきがあるが、定植3年目の秋には樹形が完成する(表1)。
  • 定植1、2年目にジベレリンペーストを塗布した場合、ほとんどの樹で定植3年目が初開花となる。定植3年目の開花期における花芽着生は主枝数が多いほど良好となり、6本主枝仕立ての主枝当たり頂芽花芽数は2本主枝仕立ての4倍以上になる(表2)。また、定植1年目の新梢総伸長量が大きいほど花芽数が多く、ジベレリンペースト塗布が花芽の増加に寄与している(図2)。
  • 盛岡74号/JM2のV字栽培方式では、6本主枝仕立てでジベレリンペースト塗布により主枝伸長を促進する幼木期管理が適している。

成果の活用面・留意点

  • 盛岡74号は農研機構果樹茶業研究部門で育成されたカラムナータイプのリンゴであり、現在、系統適応性検定試験に供試されている。
  • 使用したジベレリンペースト剤(ジベレリン2.7 %含有)はリンゴでの農薬登録がないが、現在、登録に向けて効果の確認試験が行われている。
  • 本試験は樹高3.5 m、主枝長3.0 mという樹形および6本主枝仕立てを検討する観点から半わい性台木のJM2を使用している。JM2は樹勢が強くなる可能性があるが、6本主枝仕立てで着果負担をかけることにより樹勢の制御が期待できる。JM2以外の台木を使用した場合にはV字栽培方式に適した主枝数が異なる可能性がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(国際競争力強化プロ「省力樹形」)
  • 研究期間 : 2019~2021年度
  • 研究担当者 : 守谷友紀、阪本大輔、馬場隆士、花田俊男、岩波宏
  • 発表論文等 : 守谷ら(2023)園学研、22(2):155-162