V字仕立てのニホンナシ「豊水」は初期収量が高く早期成園化が可能である

要約

V字仕立てのニホンナシ「豊水」は平棚仕立て(慣行)に比べて樹冠拡大が早く、10 a当たりの収量は定植3年目から3 tを超え、4年目以降は4本および6本主枝で4 tを上回る。果実重は慣行に比べ小さく、糖度は4本または6本主枝で着果量を8~12果/主枝とするとほぼ同等である。

  • キーワード : ニホンナシ、樹形、早期多収、密植
  • 担当 : 果樹茶業研究部門・果樹生産研究領域・果樹スマート生産グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

我が国の果樹生産現場では人手不足や生産者の高齢化が進んでいる。特に、ニホンナシでは近年生産量が急激に低下しており、早期に高い収量が確保できる栽培技術の開発が求められている。
そこで、本研究では機械化にも適応でき、かつ早期多収が期待できるV字仕立てをニホンナシ「豊水」に適用し、主枝本数および着果量の違いが収量および果実品質に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • V字仕立ては、仰角67.5°(支柱間45°)、高さ3.6 mのV字棚を列間4 mで設置した(図1)ほ場に、主枝間隔が50 cmとなるよう2本主枝は樹間0.5 m、4本主枝は樹間1 m、6本主枝は樹間1.5 mで樹を植え付け、主枝をV字棚に誘引する(図2)。
  • 樹冠拡大が早かった2本主枝および4本主枝では定植2年目から収量が得られ、定植3年目にはいずれの主枝数においても成園目安収量とされる3 t/10aを超える。定植4年目以降は4本主枝および6本主枝で4 t/10aを上回る収量が得られる(図3)。
  • 着果量が多いほど収量は増えるが、果実重および糖度が低下する傾向がある(表1)。果実重はいずれの主枝数・着果量区においても慣行の平棚仕立てに比べて小さい。糖度は4本主枝および6本主枝の少~中着果量区(8~12果/主枝)で慣行の平棚仕立てとほぼ同等である(表1)。
  • 以上の結果から、定植5年目までのV字仕立てのニホンナシ「豊水」では4本主枝が最も多収であり、糖度は4本主枝または6本主枝で着果量を8~12果/主枝することが適していると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は定植5年目までの結果であるため、今後の収量性や果実品質については引き続き検討する必要がある。
  • 樹齢の経過とともに主枝上の花芽の維持が困難となることが予想されることから、主枝の更新等の枝梢管理が必要となると考えられる。

具体的データ

図1 V字棚の概要,図2 V字仕立て樹の模式図,図3 定植2~5年目の収量,表1 主枝本数および着果量が果実品質に及ぼす影響(定植5年目)

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2016年度~2020年度
  • 研究担当者 : 羽山裕子、阪本大輔、山根崇嘉、三谷宣仁、草塲新之助
  • 発表論文等 : 羽山ら(2023)園学研、22(1):55-61