要約
北海道と都府県の草地飼料畑への堆肥、スラリーの施用量は、飼料畑>採草地>放牧地の順である。都府県は北海道より飼料畑への堆肥、スラリーの施用量が多く、化学肥料の施用量が少ない。また、永年草地では北海道、都府県ともに草地更新時に多量の堆肥が施用される。
- キーワード : 採草地、飼料畑、草地更新、放牧地
- 担当 : 畜産研究部門・畜産飼料作研究領域・省力肉牛生産グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
脱炭素社会の実現を目指すには、温室効果ガスを削減するとともに、温室効果ガスの吸収を促進する必要がある。草地飼料畑への堆肥施用は土壌への炭素蓄積による温室効果ガスの吸収に寄与するが、草地飼料畑への堆肥施用量の実態は、必ずしも明らかではない。また、永年草地の更新時(耕起と再播種)に、比較的多量の堆肥が施用されることが広く知られているが、草地更新時の堆肥施用量について、定量的な情報はほとんど存在しない。本研究は、全国の酪農経営体の草地飼料畑における堆肥、スラリー、化学肥料の施用量の実態を、アンケート調査で明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
- 本成果は、全国の酪農経営体を対象にアンケートを行い、北海道130戸、都府県133戸からの回答を集計したもので、回答率は13%である。
- 草地飼料畑への堆肥の施用量は、飼料畑(北海道:37 t/ha/年、都府県:69 t/ha/年)>採草地(8.7 t/ha/年、14 t/ha/年)>放牧地(2.7 t/ha/年、0.2 t/ha/年)の順である(表1、2)。
- 飼料畑への堆肥の施用量は、都府県(69 t/ha/年)が北海道(37 t/ha/年)より多く、化学肥料の施用量が少ない(表1、2)。
- 採草地への堆肥の施用量は、都府県(14 t/ha/年)が北海道(8.7 t/ha/年)より多いが、化学肥料の施用量は同等である(表1、2)。
- 永年草地では、北海道(88 t/ha)、都府県(41 t/ha)ともに、草地更新時に多量の堆肥が施用される(表1、2)。維持段階の採草地と比べると、草地更新時の堆肥施用量は、北海道で約10倍、都府県で約3倍である。
成果の活用面・留意点
- 全国の草地飼料畑、草地更新時の永年草地への堆肥、スラリー、化学肥料の施用量の実態を示す基礎資料として活用できる。
- 永年草地では、維持段階と比べ草地更新時に比較的多量の堆肥が施用される実態を示す根拠となる。
- 堆肥、スラリー、化学肥料の施用量は、2015~2016年に、北海道と都府県の各地域において、1年間(草地更新は更新時のみ)に施用された堆肥、スラリー、化学肥料のそれぞれの重量(施用量×施用面積)の和を各地目面積(無施用を含む)の和で除した値(面積加重平均値)である。
- 個々の圃場における養分供給量の過不足は、家畜排せつ物と化学肥料の施用量のほか、圃場に蓄積している養分量、各都道府県の標準施肥量、目標収量、作付回数(飼料畑)、マメ科率(採草地、放牧地、兼用地)の情報を基礎に個別に判断する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 日本中央競馬会畜産振興事業(草地飼料畑の管理実態調査事業)
- 研究期間 : 2015~2022年度
- 研究担当者 : 森昭憲、道信有真(北大)、宮田明、松本武彦(秋田県立大)、松浦庄司、築城幹典(岩大)、有田敬俊(道総研)、清水真理子(寒地土木研)、波多野隆介(北大院)
- 発表論文等 : Mori A. et al. (2021) Jpn. Agric. Res. Q. 56(4):349-356
doi.org/10.6090/jarq.56.349