鶏肉エキスに含まれる油脂のヒトにおける検知閾値

要約

訓練された官能評価パネルを用いて、チキンオイル無添加の鶏肉エキスとチキンオイルを添加した鶏肉エキスの三点識別試験を行うことで得られた鶏肉エキスに含まれる油脂のヒトにおける検知閾値は0.0387% (w/v)である。

  • キーワード : 食肉、油脂、官能評価、閾値、識別試験
  • 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉品質グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

近年、官能評価を用いた「食べてわかる違い」に基づく食肉の差別化の取り組みが国内外を問わずに行われている。特に脂肪含量は食肉の高付加価値化において有用な品質要素とされているが、食肉およびその加工品において油脂の検知閾値は明らかではない。
そこで本成果では、チキンオイルを添加した鶏肉エキスをモデルとして訓練された官能評価パネリストによる識別試験を行い、ヒトが鶏肉エキスに含まれる油脂を検知できる閾値を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 鶏もも肉の膝から上(近位)の部分をミンチにし、熱水(90°C)で2時間加熱抽出後、氷を用いて急激に冷却し、固化した油脂をメンブレンフィルターユニットにより除去し、鶏肉エキスを調製する。
  • 1.で調製したエキスにチキンオイルを0.100%,0.033%,0.011%,0.004%添加して超音波ホモジナイザーで乳化する(12,000 rpm、40°C、5分)。
  • 訓練されたパネリストにより、1.で調製したチキンオイル無添加のエキスと2.で調製した各濃度のチキンオイルを添加したエキスとの間で三点識別試験を合計26回実施した結果、有意に識別できたのはチキンオイル0.100%および0.033%である(表1)。
  • 表1の各濃度における正解率を三点識別における正解の期待値(1/3)で補正して真の正解率を算出し、得られた真の正解率とチキンオイルの添加濃度から計算したロジスティック回帰曲線が図1である。
  • 検知閾値は真の正解率が0.5となる濃度であることから、鶏肉エキスにおけるチキンオイルの検知閾値は0.0387% (w/v)である。

成果の活用面・留意点

  • 食肉の熱水抽出物において「食べてわかる違い」が起こりうる油脂の濃度の参考として活用できる。
  • 本成果はモデル系として鶏肉エキスを用いているため、固体である精肉および加工肉等における油脂の検知閾値とは異なる可能性があるため、注意が必要である。
  • 油脂の種類や乳化の程度の違いによって検知閾値が変動する可能性があるため、条件の異なる試料においては個別に検討が必要である。

具体的データ

表1 チキンオイル無添加エキスとチキンオイル添加エキスの三点識別の結果,図1 チキンオイル添加濃度と真の正解率とのロジスティック回帰曲線による鶏肉エキスにおけるチキンオイルの検知閾値の推定

その他

  • 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2018~2022年度
  • 研究担当者 : 渡邊源哉、石田翔太、本山三知代、デュコンセイユ アン、瀧田渓吾(筑波大)、中島郁世、田島淳史(筑波大)、佐々木啓介
  • 発表論文等 : Watanabe G. et al. (2022) Anim. Sci. J. 93: e13695