豚肉に対する購入経験や嗜好性、知識、およびニーズには地域間差がある

要約

関東地方の一般消費者は近畿地方よりも豚肉の購入経験が多く、豚肉料理への嗜好性も高い。他方、豚肉に関する知識や品質に関するニーズは近畿地方の消費者の方が高い。食肉産業従事者においては、西日本の方が東日本と比較して「消費者の価格志向が高く、安価を求める」と考えている。

  • キーワード : 豚肉、消費者、食肉産業従事者、アンケート、地域間差
  • 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉品質グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

我が国における豚肉の消費量は西日本より東日本で高く、国産豚肉の競争力強化のためには西日本における消費者にも訴求する販売戦略の確立が必要である。このような販売戦略の確立のためには一般消費者や食肉産業従事者の豚肉に対する購入・取扱経験や嗜好性、知識、およびニーズの地域間差を理解することが有益であるが、これまでに国内消費者や食肉産業従事者の地域間差に着目した調査は極めて少ない。
そこで本研究では、東日本と西日本における消費者や食肉産業従事者に対して行ったアンケート調査の解析結果から、豚肉に対する購入経験や嗜好性、知識、およびニーズの違いを提示する。

成果の内容・特徴

  • 本成果は、関東地方(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)および近畿地方(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)在住の一般消費者285名、ならびに東日本(福井県、岐阜県、静岡県以東)および西日本(京都府、滋賀県、愛知県以西)在住の食肉産業従事者112名を対象としたwebアンケートを集計、解析したものである。
  • 一般消費者に対する設問は豚肉の購入手段、購入品目、種々の特性の豚肉に関する購入・喫食経験、豚肉料理の嗜好、豚肉に関する知識、ニーズ・意識に関する合計109項目である。食肉産業従事者に対する設問は、種々の特性の豚肉の取扱経験およびクレーム経験、豚肉に関する知識、意識、改善要望に関する合計80項目である。
  • 一般消費者において統計的に有意(P<0.05)な地域間差の認められた項目は16問であり、関東地方の消費者の方が豚肉の購入経験や豚肉料理への嗜好性が高い一方、近畿地方の消費者の方が豚肉に関する知識や品質に関するニーズが高い(表1)。
  • 食肉産業従事者において統計的に有意(P<0.05)地域間差の認められた項目は4問であり、西日本の食肉産業従事者の方が豚肉や養豚に関する知識が高く、「消費者の価格志向が高く、安価を求める」と考える度合いも強い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 西日本の食肉産業従事者は「消費者は価格志向が高く、安価を求める」と考えている一方で、近畿地方の消費者は豚肉に対する知識が高く、また品質志向が高い。西日本における豚肉の消費拡大を図る上で、流通事業者に対して、「消費者は単に安価を求めているだけではない」ことに関して情報提供できる。
  • 本アンケートの実施時期は2015年12月であり、コロナ禍以前かつ飼料価格高騰以前の結果であることに留意する必要がある。
  • 本アンケートに回答した食肉産業従事者の構成は4割程度が外食関係であった。全体の6割程度が仕入れ経験を有していた。6割以上が枝肉や部分肉の取扱経験を有さなかった。食肉産業への経験年数は半数が10年未満であった。本調査結果の活用にあたっては、これらのことを考慮する必要がある。

具体的データ

表1 一般消費者の豚肉に対する購入経験、嗜好性、知識、ニーズの地域間差,表2 食肉産業従事者の豚肉に対する知識および意識の地域間差

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(農食事業)
  • 研究期間 : 2015-2021
  • 研究担当者 : 佐々木啓介、本山三知代、渡邊源哉、中島郁世
  • 発表論文等 : 佐々木ら(2022)日豚会誌、59:70-87