要約
家畜飼料向けに流通している酒粕の粗蛋白質(CP)含量のばらつきは大きいが、CPあたりのアミノ酸含量のばらつきは小さい。CP含量の高い酒粕の豚におけるCP消化率は76.0%、可消化エネルギー(DE)は17.11 MJ/kgDMである。
- キーワード : 酒粕、粗蛋白質含量、アミノ酸含量、消化率、栄養価
- 担当 : 畜産研究部門・食肉用家畜研究領域・食肉用家畜飼養技術グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
液化酵素で米のデンプンを液状化して仕込む清酒製造法(液化仕込み)により産出される酒粕の粗蛋白質(CP)含量は一般的な酒粕に比べて高くなるが、豚における消化率及び栄養価は不明である。
そこで、大豆粕のCP含量51.1 %DMを超える酒粕(高CP酒粕)の飼料利用のために、家畜飼料向けに流通している酒粕の栄養成分分析を行い、次いで高CP酒粕について肥育豚を用いる消化試験により消化率及び栄養価を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 家畜飼料向けに流通している酒粕の栄養成分値にはばらつきがあり、特にCP及び可溶無窒素物 (NFE)含量のばらつきが大きい(表1)。
- 一方、CPあたりのアミノ酸含量のばらつきは小さく、CP含量を測定することで酒粕中のリジン等の必須アミノ酸含量を推定できる(表2)。
- 消化試験に用いる高CP酒粕のCP含量は73.5 %DMと高く、NFE含量は12.6 %DMと極めて低い。CPあたりのアミノ酸含量は表2に示した値と同等である(表3)。
- 高CP酒粕の豚におけるCP消化率は76.0 %と一般的な酒粕(日本標準飼料成分表(2009年版)の酒粕(乾):CP36.9 %DM、CP消化率78 %、DE15.85 MJ/kgDM)と同等であり、可消化エネルギー(DE)は17.11 MJ/kgDMである(表4)。
成果の活用面・留意点
- CP含量の高い酒粕を豚の飼料原料として利用する際の配合設計に活用できる。
- 酒粕は大豆粕に比べてCPあたりのリジン含量が低いため、CP含量が高い酒粕を大豆粕の代替として利用する際にはリジン要求量を満たすよう留意する。
- 生の酒粕には8 %程度のエタノールが含まれていることから、豚への給与に際しては乾燥や加熱によりエタノールを除去する、もしくは他の飼料原料と混合する等により、エタノール摂取量が過剰にならないよう留意する。
具体的データ
その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2019~2020年度
- 研究担当者 : 大森英之、川口理恵、芦原茜、井上寛暁、青山次郎(青山商店)、田島清
- 発表論文等 : 大森ら(2022)日豚会誌、59:61-69