破砕粒度が粗挽きと粉砕の籾米サイレージ間で泌乳牛の飼養成績に差は見られない

要約

籾米サイレージの破砕粒度を粗挽き(粒度2 mm以上の割合が全体の86.5 %)または粉砕(粒度2 mm以上の割合が45.8 %)とし、TMR中に乾物で18 %混合して泌乳中後期の乳牛に給与した場合、摂取量、泌乳成績および第一胃内液性状には破砕粒度の違いによる明らかな差は認められない。

  • キーワード : 籾米サイレージ、破砕粒度、泌乳牛、摂取量、泌乳成績
  • 担当 : 畜産研究部門・乳牛精密管理研究領域・乳牛精密栄養管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

近年、飼料用米を籾米サイレージの形で乳牛に給与する事例が増えている。籾米サイレージを無破砕で給与すると消化性が大幅に低下するため、籾米サイレージを牛に給与する際は必ず破砕等の加工を行う必要がある。これまでの研究で籾米サイレージの破砕粒度の違いは第一胃内の分解特性や消化性に影響を及ぼす可能性が示唆されているが、泌乳牛の飼養成績に及ぼす影響は明らかではなかった。そこで、本研究では破砕粒度の異なる籾米サイレージを泌乳牛に給与し、飼料摂取量や第一胃内液性状、泌乳成績に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 給与した籾米サイレージは、ダブルローラ式破砕機(DHC-4020;デリカ)を用いて、破砕ロール間隔1.0 mm(粗挽き)、0.2 mm(粉砕)で破砕を行っており、粗挽きで粒度2 mm以上の割合が全体の86.5 %、粉砕で粒度2 mm以上の割合が45.8 %である(図1、図2)。
  • 籾米サイレージの化学成分は、粗挽き、粉砕でそれぞれ、乾物含量は66.2 %および67.3 %である。また、乾物当たりの粗蛋白質含量はそれぞれ7.3 %および7.8 %、NDFom(中性デタージェント繊維)含量は17.1 %および17.1 %、でんぷん含量は61.0 %および59.4 %である。
  • それぞれの籾米サイレージをTMR中に18 %混合して、粗蛋白質含量が乾物当たり14.5 %程度、NDFom含量が乾物当たり34.5 %程度、でんぷん含量が乾物当たり25 %程度のTMRに調製している。
  • 粗挽き籾米サイレージまたは粉砕籾米サイレージを含むTMRを、それぞれ泌乳中後期牛6頭に2週間程度給与した場合、異なる破砕粒度間にTMR摂取量、乳量、乳脂肪率、乳蛋白質率、乳糖率に差は認められない(表1)。
  • 第一胃内液中の酢酸、プロピオン酸、酪酸濃度にも、籾米サイレージの破砕粒度の違いによる差は認められない(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 籾米サイレージを泌乳中期以降の乳牛に給与するときの基礎データとして利用できる。
  • 籾米サイレージは給与前に水分含量の確認をし、適切に飼料設計を行う。
  • 籾米サイレージへの切り替えは、採食量や糞の状況などを確認しながら、少しずつ行う。
  • 長期給与時に及ぼす影響については、別途検討する必要がある。
  • 微粉砕した籾米サイレージの給与については、別途検討する必要がある。

具体的データ

図1 籾米サイレージ 粗挽き(左)、粉砕(右),図2 籾米サイレージの粒度分布,表1 供試牛のTMR摂取量、泌乳成績、第一胃内液中の酢酸、プロピオン酸、酪酸濃度

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(平成28年度補正予算「経営体強化プロジェクト」)
  • 研究期間 : 2017~2020年度
  • 研究担当者 : 神谷裕子、鈴木知之、井上秀彦、川出哲生、小林寿美、遠野雅徳、江口研太郎
  • 発表論文等 : 神谷ら(2022)日本畜産学会報、93:357‐362