泥中のレンコンはカモ等の一部の種(マガモとオオバン)の食害を受ける

要約

水が張られたハス田へ夜間に飛来するカモ等は複数種おり、そのうちマガモとオオバンは、泥中で育つレンコンを水面下40cm程度まで食べることが確認され、泥中の浅い位置にあるレンコンほど食害を受けやすい。採食行動はカモ等の種によって異なり、泥中のレンコンを食べない種もいる。

  • キーワード : 鳥害、カモ類、マガモ、オオバン、レンコン
  • 担当 : 畜産研究部門・動物行動管理研究領域・動物行動管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

茨城県霞ケ浦周辺の国内最大のレンコン産地では、カモ等(カモ類及びバン類)とされる年間約3億円(2020年度)の被害が報告されている。しかし、主に夜間に生じる食害の実態は確かめられていない。対策として多くのハス田に防鳥網が設置されているが、野鳥が網に引っかかって死ぬ事故が問題となっている。
そこで、本研究ではハス田の泥中に試験的にレンコンを設置して、食害を引き起こすカモ等の種や採食行動を明らかにすることにより、実態に即した被害対策を講じていくための知見を得る。

成果の内容・特徴

  • 収穫後のハス田1圃場(茨城県土浦市内)に試験的にレンコンを設置し(図1左)、自動撮影カメラを用いて夜間のカモ等の採食行動を録画すると、マガモとオオバンが頭を水中に浸したり、倒立を繰り返したりしながら泥中のレンコンを食べており(図2a)、ハス田の泥中で育つレンコンが少なくともマガモとオオバンによる食害を受けると考えられる。
  • マガモでは脚で泥を掘る動作(図2b)、オオバンでは潜水による採食も確認し、レンコンが食べられた範囲の泥面はすり鉢状に掘られ、その底(水面下約40cm)よりも深くにはレンコンが残る(図1右)。
  • 浅い位置のレンコンほど、食害を受けやすい。レンコンを設置する深さを変えながら行った16回の試験において、カモ等は畦上や水面、及び水面下20cmまでのレンコンを容易に完食し、水面下20~40cmまでのレンコンは、脚で泥を掘る動作や潜水を交えて完食する場合がある。
  • 採食行動は種によって異なる。マガモとオオバン以外の5種では撮影回数が少なかったが、泥中のレンコンを食べる行動は確認されていない(図3)。ただし、水面や畦上にあるレンコンを食べる行動が一部の種で見られる。ハス田にはレンコンの他にも、ウキクサ類やプランクトンなどカモ類の食物が豊富に存在することから、泥中のレンコンを食べないカモ類にとっても、ハス田が採食場所となっていると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • マガモ(カモ目カモ科の水鳥)は大部分が冬に日本に渡来し、霞ケ浦で越冬する十数種のカモのうち最も個体数が多い。オオバン(ツル目クイナ科の水鳥)は近年全国的に個体数が増えており、霞ケ浦周辺では一年中生息する。これら2種に加え、カルガモでも、マガモと同様の行動で泥中の収穫前のレンコンを食べる様子が別の圃場で観察されており、レンコンを食害する種と食害の程度については更なる調査が望まれる。
  • 今回は1圃場での試験で、カモ等がどの程度の深さのレンコンまで食べるかは泥の柔らかさ等に応じて異なると考えられるため、複数の圃場で比較するなど今後確かめる必要がある。
  • 霞ケ浦周辺のハス田は通年で水が張られ、カモ等の他にも、レンコンを食べない多くの水鳥が生息している。レンコン被害の軽減と鳥類の生息環境の保全を両立できる対策技術の確立が必要である。

具体的データ

図1 1回の試験で設置・回収したレンコンの様子,図2 マガモとオオバンの採食行動の様子,図3 種ごとの採食行動の違い

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2020~2022年度
  • 研究担当者 : 益子美由希、山口恭弘、吉田保志子
  • 発表論文等 : 益子ら(2022)日本鳥学会誌、71(2):153-169