テンのオス成獣が通過可能な最小の穴サイズは正方形では一辺5cm、円形では直径5.5cmである

要約

テンの飼育個体は冬に比べて夏に体重が軽い。夏の通過可能な穴の最小サイズは冬よりも小さい。夏の通過可能な穴の最小サイズは、正方形では一辺5cm、円形では直径5.5cmである。

  • キーワード : 穴の大きさ、円形、家屋侵入、季節変化、正方形、テン
  • 担当 : 畜産研究部門・動物行動管理研究領域・動物行動管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

テンによる家屋侵入被害や農作物被害が問題になっている。テンは家屋の穴や隙間から屋根裏に侵入して糞尿などの被害を引き起こす。また、そこを拠点に周囲の圃場でイチゴやブドウ、カキなどの果樹の農作物被害を引き起こすことがある。そのような拠点を利用させず、動物を寄せ付けない環境を作ることも農作物被害対策の一つである。屋根裏への侵入を防ぐために侵入経路となる穴や隙間をふさぐ必要がある。しかし、テンがどのくらいのサイズの穴を通過可能かどうか不明である。そこで、家屋侵入被害防止のためにテンが通過可能な穴サイズを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 試験ケージの中に誘引餌を設置して、飼育下のテンが通過可能な最小の穴サイズを明らかにする(図1)。試験に用いた穴の形は正方形と円形で、飼育下の体重に季節変化があること(野生下では不明)から夏と冬に試験を行う。テンのオス成獣の飼育個体3頭の体重は、夏に1.1~1.5kg、冬に1.3~2.1kgである。冬に比べて夏に体重が軽い(表1)。
  • テンが通過可能な穴サイズは穴の形に関わらず冬に比べて夏に小さい(表2)。通過可能な最小の穴サイズは正方形では一辺5cm、円形では直径5.5cmである。
  • 穴サイズが小さくなり、通過することが難しくなると、穴の周辺を噛む行動や引っかく行動が多くみられるようになる(図2)。
  • 通過できなかった穴サイズでは頭は抜けるが、肩が引っかかる。肩が通過する際の制限要因になっている可能性がある。
  • 電気柵を併用した柵の網目サイズを上記のサイズより小さくすることで圃場侵入を防ぐことも期待できる。

成果の活用面・留意点

  • テンの家屋侵入被害防止のために上記よりも大きなサイズの家屋の穴や隙間をふさぐことで家屋侵入を防ぐことが期待できる。また、侵入防止柵の網目サイズや電気柵の柵線の高さの目安にもなる。
  • 穴を噛む行動や引っかく行動がみられたことから、穴をふさぐ場合には金網などの強度のあるものでふさぐ必要がある。
  • 本試験は3頭のオスの飼育個体のデータに基づいている。テンに性的二型があることが知られており、オスの方がメスよりも大きい。したがって、今後はメスについて通過可能なサイズを明らかにする必要ある。ただし、個体Aの夏の体重はメスのツシマテンの体重の平均値(約1kg)と同程度の体重であり、参考可能な値である。

具体的データ

図1 試験ケージを正面から見た様子,図2 穴のサイズごとの噛む行動とひっかく行動が発現頻度,表1 各試験時開始前に計測した夏と冬のテンの体重,表2 夏と冬にテンが通過可能であった正方形と円形の最小サイズ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2013~2021年度
  • 研究担当者 : 上田弘則、堂山宗一郎、江口祐輔
  • 発表論文等 : Ueda et al. (2021) Mammal Study 47:3-11