キク電照栽培用光源選定・導入のてびき
要約
キク生産における白熱電球代替光源普及に活用することを目的に「キク電照栽培用光源選定・導入のてびき」を作成した。分光分布の異なる光源間の花芽分化抑制能力は、キクの波長別分光感度を元にした「補正放射照度」を用いると比較可能となる。
- キーワード:電照ギク、光源、開花調節
- 担当:日本型施設園芸・花き効率生産
- 代表連絡先:電話 029-838-6801
- 研究所名:花き研究所・花き研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
キク栽培においては、電照を用いた開花調節技術が重要である。近年、白熱電球にかわり、省エネルギーかつ長寿命の新しい種類の光源を比較的低価格で購入できるようになったことから、生産現場では蛍光灯や発光ダイオード(LED)等の導入が進みつつある。しかし、光源ごとの花芽分化抑制能力や経済性が不明である等の問題点が明らかとなってきたことから、キク類(輪ギク、スプレーギク、小ギク)の電照栽培における光源利用の現状を調査するとともに、白熱電球代替光源の花芽分化抑制能力の推定方法等について解説した「てびき」を作成し、光源導入に関する情報を提供する。
成果の内容・特徴
- キク類(輪ギク、スプレーギク、小ギク)栽培ほ場(3,463.8ha)の63.3%に光源が設置 されている。白熱電球からその他の光源への転換は、光源設置ほ場の35.6%まで進んでいる。現状では、そのほとんどが蛍光灯である。
- キク電照栽培用光源の特性や導入の際に留意すべき点、異なる光源の花芽分化抑制能力比較方法等について解説した「キク電照栽培用光源選定・導入のてびき」を作成した(図1)
- 「岩の白扇」他4品種での解析結果から、暗期中断処理によるキク花芽分化抑制の分光感度曲線を推定した(図2)。波長630nm付近の赤色光に対して高い感度を示す。
- 分光分布等が異なる各種光源の分光放射照度に、推定した花芽分化抑制の分光感度を乗じて求める「補正放射照度」を用いると、分光分布の異なる光源間の花芽分化抑制能力が比較可能となり (図3)、白熱電球を基準として新たな光源の設置方法を見積もることができる。
普及のための参考情報
具体的データ
その他
- 中課題名:生育開花機構の解明によるキク等の主要花きの効率的計画生産技術の開発
- 中課題整理番号:141e0
- 予算区分:委託プロ(光プロ)、交付金
- 研究期間:2009~2013年度
- 研究担当者:久松 完、郡山啓作( 鹿児島県農業開発総合センター) 、白山竜次( 鹿児 島県農業開発総合センター) 、樋口洋平、住友克彦
- 発表論文等:
白山ら(2013) 園芸学研究12:195-200
Sumitomo K. et al. (2012) J. Hort. Sci. & Biothech. 87:461-469
Higuchi Y. et al. (2013) PNAS 42:17137-17142