花穂整形器によるブドウ花穂整形の省力化
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要約
花穂整形器は、本体中央部に半円形の切り刃を一対付けた手のひらサイズのブドウ花穂整形用の道具である。半円形の切り刃の間に穂軸を挟み、穂軸に沿って下方に動かすことで不要な支梗を効率よく切除でき、花穂整形に要する時間を大幅に短縮できる。
- キーワード:ブドウ、GA処理、花穂整形、無核栽培、有核栽培、省力化
- 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究チーム
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
ブドウの花穂整形は、花振るい防止や果房の形を整えることを目的に、無核・有核栽培を問わず多くの栽培品種で不可欠な作業であ る。本作業は開花初期の極短期間に、すべての花穂に対して作業を行う必要があること、ハサミや指先で作業する必要があることから、省力化が強く望まれてい る。そこで、花穂整形を簡便な操作で短時間に完了できる技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 花穂整形器は、本体中央部に一対の半円形の切り刃を取り付けた手の平サイズの道具である。作業中に穂軸を傷つけないように、半円形の切り刃は所定の高さをもたせ、刃先が内側から外側に向くよう工夫している。さらに、使用中に本体部が上下にずれて 穂軸を傷つけないように連結板を備えている(図1)。
- 基本操作は、1)一対の切り刃の間に穂軸を挟み、2)本体部の左右が上下にずれないように連結板で固定し、3)穂軸に沿って下方に動かすことによって不要な支梗を切除する(図2)。岐肩がある場合、先端部の押し刃で切除する(図1)。
- 「巨峰」の無核栽培では、ハサミで花穂整形を行った場合の1花穂当たりの作業時間は18秒であるのに対して、花穂整形器では 4.3秒である。また、有核栽培では、ハサミは11.7秒であるのに対し、花穂整形器では4.2秒であり、ハサミの作業に対し、6~7割の時間短縮が可能 である(表1)。
- 花穂整形器で処理した穂軸には、ハサミと同程度の切り口は残るが(図3)、穂軸への影響はない。無核・有核栽培ともに慣行通りの花穂整形ができるため、GA処理、摘粒、袋かけ、傘かけは従来通り行える。
- 花穂整形器で処理した果房の果実品質は、ハサミで処理した果房と有意な差は認められない(データ略)。
成果の活用面・留意点
- 花穂整形を必要とする多くのブドウ品種で使用できる。
- 花穂の小さい品種や穂軸の細い品種では、支梗の切除が困難である。
- 一気に切り下げて使用すると切り刃内に支梗の切れカスがつまるため、使用の際には軽く上下動させて切れカスを払い落としながら使用するとよい。
- 平成20年3月より、日本園芸農業協同組合連合会を通して市販される。
具体的データ




その他
- 研究課題名:高収益な果樹生産を可能とする高品質品種の育成と省力・安定生産技術の開発
- 課題ID:213-e
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2006~2007年度
- 研究担当者:薬師寺博、上野俊人、東 暁史、児下佳子
- 発表論文等:
1)薬師寺ら(2007)「花穂整形器」特許公開2007-75014
2)薬師寺ら(2008)園学研.7: 81-86.