DNAマーカー型一覧表解析のためのソフトウエアMarkerToolKit

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要約

DNAマーカーを多数の品種に適用して得られたDNAマーカー型一覧表に関する9種類の統計計算や書式変換を簡単な操作で実行するソフトウエアである。2倍体の生物に共優性マーカーを適用した結果であれば、生物種を問わず利用できる。

  • キーワード:DNAマーカー、ソフトウエア、遺伝統計
  • 担当:果樹研・果樹ゲノム研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

育成品種保護などを目的に開発されたDNAマーカーは多数の品種に適用され、それらの結果は一覧表に整理されて品種判別などに利 用されている。ところが、DNAマーカー数や適用した品種数が増え、一覧表に記載されるデータ量が多くなると、統計計算やその前処理としての書式変換を表 計算ソフトウエアのマニュアル操作で行うことが困難になる。そこで、DNAマーカー型一覧表の解析のために必要な9種類の計算処理を簡単な操作で自動的に 実現するソフトウエアを開発する。

成果の内容・特徴

    • DNAマーカー型一覧表(表1)に関する下記の9つの計算を行うことができる。

(1) SSRマーカーの数値表記について、MinimalMarker(最少マーカーセット選択プログラム)の入力書式に合わせてアリルの表記順を昇順に並べ替えて出力する。

(2) 全ての2品種の組合せで判別可能なマーカー数を出力する。例えば、その組み合わせにおいて判別可能なマーカー数が0の場合は白抜きで表示される(図1)。

(3) 数値表記のマーカー型を文字表記に変換する。

(4) 各マーカーのアリル頻度、ヘテロ接合度、多型情報含有値を出力する。

(5) 各マーカーのマーカー型の種類と頻度を出力する。

(6) SSRマーカーのアリル間の数値の差の絶対値を出力する。

(7) SSRマーカーの数値表記を相対表記に変換して出力する。この場合、表1のすべてのマーカー型の数値を昇順に並べ替え、最上行のマーカー型の小さい側の数値を0とし、他のマーカー型との差で示す(表2)。

(8) 鵜飼の品種判別理論値(鵜飼, 2004)を出力する(表3)。この理論値が0に近いほど品種判別の精度が高い。

(9) 樹形図解析のためにアリルの存在を0/1形式で表記して出力する。

  • 本ソフトウエアは、2倍体の生物に共優性マーカーを適用した結果であるならば、どのような生物データについても計算可能である。また、入力するマーカー型の表記方法は文字表記でも良いし、SSRマーカーのような数値表記でもよい。
  • 本ソフトウエアは、Windowsマシンで動作し、データの入出力をMicrosoft® Excel 2003で行うことができる。また、計算の実行も全て簡単なマウス操作で行えるので、コンピュータの操作に不慣れな研究者でも容易に利用できる。

成果の活用面・留意点

  • マーカー型データ中には欠測値やヌル値を含まないことが必要である。
  • 本ソフトウエアで計算可能なデータサイズは、マーカー数は250マーカーまで、品種数は500品種まで、また、アリルまたは遺伝子型数は1マーカーあたり62までである。
  • 果樹研究所ホームページから本ソフトウエアをダウンロードできる。

具体的データ

表1 SSRマーカー*におけるマーカー型一覧表の例 図1 表1についてすべての2品種の組合せにおける判別可能なマーカー数を総当りの表の形式で出力した結果

 

表2 表1のデータについて数値の絶対表記を相対表記に変換して出力した結果 表3 表1のデータについての鵜飼の品種判別理論値の出力結果

 

その他

  • 研究課題名:果樹の育種素材開発のための遺伝子の機能解析及びDNA利用技術の開発
  • 課題ID:221-j
  • 予算区分:交付金、委託プロ(食品)
  • 研究期間:2007年度
  • 研究担当者:藤井浩、島田武彦、遠藤朋子、清水徳朗、山本俊哉
  • 発表論文等:藤井、山下(2007)農研機構職務作成プログラム 「Marker Tool Kit」,機構-D03.藤井ら(2008)DNA多型,16:103-107